今日は幽霊の日らしいという事で、一つ怪談でも書こうかなと思います。
これは、先日の怪談ナイトで話す候補の一つにあった体験談です。
先日の怪談ナイトでお話しした通り僕の住んでいるマンションは中々に不思議な事が起きる場所です。
これは去年の夏の始まりの季節、ちょうど今位の時期に起きた話です。
僕の住んでいるマンション、、、というか街自体が野良猫の多い街でして、何年か前にテレビでも特集されるような、そんな街なんですけど
よく、夜になると野良猫同士が喧嘩したりしてて
ニャーニャーやってるんです。
その夜も深夜1時とかそれ位の時間にニャーニャー鳴り出しまして、
あぁーやってらーと思ったんですがね
いつもなら少し時間が経つと収まるんだけど
この日は中々収まらない
若干イライラし始めた僕は窓を開けてベランダに出て下を覗いてみたんですよ
そりゃあ深夜ですから、3階の部屋から下を覗いた所で真っ暗で何も見えない。
ただ声だけは聞こえるんですよ
ベランダに出た事でさっきよりもハッキリ聞こえる
そこで、アレ?おかしいなと思ったんです。
猫の鳴き声だと思っていたこの音
ニャー
ニャー
ニャー
…
オニャー
オギャー
オギャー
オギャー
…猫の声じゃないんですよね。
明らかに赤ちゃんが泣いてる声なんです。
こんな夜中に外で赤ちゃんが泣くか?
親は?
そもそも生きた人間か?
色んな事が頭を巡り、好奇心に火がついた僕は
下に降りて確かめてみようと部屋を出てちょうど自分の部屋のあたりに向かいました。
いきなり、現場に行くのはちょっと怖いので
少し離れたあたりから覗いてみる
相変わらず泣き声は続いています。
そこにはぼやーっとした何かがいます。
もう少し近づいてみようとドンドンそのぼやーっとしたものに近づいて行くと…
そこには1人の老婆が立っていました。
この老婆、決して幽霊では無いんです。
このマンションに住んでる方で、詳しくは知らないのですが、ご高齢の方で…
言葉が悪くて申し訳ないのですが、少し頭がおかしい人という認識。
今までも何度か見かける事はあったのですが、
何も無い所に話しかけていたり、1人言を言っては笑っていたり
ある意味僕にとっては幽霊より怖い存在でした。
そんな老婆が深夜に1人で立っている
しかも、最初はこの老婆がこの赤ちゃんのような泣き声を出してると思ったから本気で逃げようかと思いました。
しかし、違った。
よくみると、その老婆腕の中に何かを抱えているんです。
実際は何も無いんですよ?
ただ、その仕草はまるで赤ちゃんを腕の中で抱っこしているような。
その腕の中から赤ちゃんの泣き声が聞こえてくるんです。
何度も言うけど腕の中には何にも無いんです。
今まで沢山の幽霊と呼ばれるものを見て来た僕にも見えなかった。
声しか聞こえなかった。
ただ老婆には見えているんでしょう。
そんな景色をしばらくボーっと見てると
ふと老婆がこちらに顔を向けて来て目が合いました。
「ごめんなさいね、聞こえてるんですよね?
中々泣き止まなくて、ご迷惑をおかけします。」
ハッキリした声と表情で僕に言いました。
その顔と表情を見て分かったよ、
あぁー、この人は決して頭がおかしい人じゃない
今までの事も含めて。
多分そっち側の人なんだと。
僕「いえ、全然大丈夫です。何かこちらこそゴメンなさい。」
何故か謝らなきゃいけない気持ちになって一言伝えると部屋に戻りました。
部屋に戻るとほどなく泣き声は止まりました。
何となく寂しいような嬉しいような
そんな夏の一夜でした。
終わり。