稲川琢磨です。

やや久しぶりな感じが否めないですが、
皆さん暑い毎日をいかがお過ごしですか?

ようやく今年もこのコラムが似合う季節になってきましたね~

最近不思議な体験をするという話が私のまわりでも増えて来ました
これはいい事なのか悪い事なのか…

しかし、これからの季節もっと増えていくでしょうね…

あ~怖い。

では、

久しぶりに怖い話を楽しんで頂きましょう。

あれはそう…

梅雨明けの知らせも訪れ、
蝉の鳴き声がにぎやかしくなってきた

調度そう、今位の時期のお話

穏やかな週末の昼下がり
いつものように退屈を持て余していた私達のもとに
一人の仲間が意気揚々と駆け付けた。

「凄い所見つけた!今夜にでもみんなで行こう!」
興奮気味の彼の一言にもあまり反応を示さない私達。

何故なら正直少し飽きていた感があった
心霊スポット巡りというやつに。

これまでに幾つもの心霊スポットを巡っていたものの
大抵は何も起こらないわけで
ただ単に夜中に不気味な場所に行くという行為も
慣れてしまっている私達にとっては刺激が足りないものになってしまっていたからだ。

「今回のは凄いよ!何でも山の中みたいな所にある病院の後地らしいんだけど、
中にはまだ病院だった当時の備品なんかが結構残っててさ
それを持ち帰えったりすると
病院へと続く山道の入口にある公衆電話がいきなり鳴り出して
返せ~

っていうらしい…

行って試してみたくない?」

彼のあまりにも嬉しそうな言いっぷりと
特にする事のなかった私達は渋々オッケーを出し
一度それぞれの家に帰り夜中に再び集合する事にした。

深夜0時
予定通りに仲間達は集合し
各々のバイクで目的地に向かった。

1時間位たった頃ようやく目的地に到着。

あたり一面
山と森林

そして…

何もない山道への入口に
小さな街頭と
公衆電話。

確かに不気味な雰囲気あふれる場所だった。

しかし、とりあえず
目的地はこの山道の上
一同はそれぞれにバイクを止め
ワイワイと山道を登って行った。

山道を登りながら話している途中
この場所の情報を持ってきたやつが新情報を手に入れたと嬉しそうに話した

「何でも霊安室が本当にヤバいらしいよ!」

…(よくある話だ)

少し山道を登った所にそれはあった
外観もかなりボロボロになった廃病院
見るからに不気味だが
こういう場所に行き慣れた私達は
何事もないように病院内に入っていく。

予想通りというか
中は既に訪れた人達の手によってかなり荒らされていた。

一通り中を散策していく
待合室、ナースセンター、精神科病棟、手術室

とりあえず片っ端から中を見て回ったが特に何かが起きる気配がない

少々飽きてきた私達だが
噂の霊安室が見つからない。
病院内はくまなく探したハズ
しかし見つからない。

もう諦めて帰ろうとしたその時だ
仲間の一人が言った

「あれ、なんだ?」

その仲間の目の見る方そこには
病院の建物とは別に小さな建物があった。

全員でその建物に近づいていくと
厳重に施されていたであろう
カギの残骸があった。

「もしかしてここが霊安室…」

誰かが言った
みんなそうだと気づいていたのだろう
少し場に緊張が走った。

誰かが建物のドアをあけた
目の前には地下に下りる階段がある

みんなで階段を下りていく
みんな緊張のせいか無言だった。

しかしこの時私は至って冷静だったんだ

何故かというと、
自慢じゃないんだが
昔から霊感というやつに恵まれていたせいか
何かが出る時は大抵わかったんだ

だからこの時何もヤバい感じがなかったから
安心していた。

後はどうやってコイツらを脅かしてやろうか…
そんな事ばかりを考えていた。

ちょうど俺と同じような境遇の友達のAも同じような事を考えていたのだろう。
この時ふと目があってニヤッとしたのを覚えている。

そうこうしているうちに下りる階段は終わりを迎えた

そしてそこにはやはり
霊安室があった。

霊安室の扉の前でたたずむ一同
私とAは誰かが扉を開けた瞬間に驚かしてやろうと
集団の一番後ろに待機

さぁ、
いよいよ扉が開く

今だ!

そう思った矢先
私やAにしてみればありえない現実がそこにはあった。

霊安室の中には男が一人立っていた

霊安室の中にぽつり一人で立ち

こちらの様子など気にもとめない感じで死体をおく台を見つめ

ブツブツ言っている。

「うわぁ~!出た~!」

一目散に全員がその場を逃げだした。

私もAもどういう事だと思いながらも一緒に逃げた
全員が山道の入口まで逃げてきた
もう大丈夫だろうとみんな一息ついた

そして一同それぞれに

「いや~初めて幽霊をみたよ!」

「怖かったな~」

「やっぱりここは本物だったな」

と興奮状態で話している。

そして
仲間のうちの一人が聞いてきた

「なぁ、あの幽霊さ、とり憑いてきたりしてないよな?大丈夫だよな?」



あぁ大丈夫。




大丈夫じゃないんだけど大丈夫…






どういう意味か解るかい?






きっとAも同じ結論に行き着いたはず
顔面蒼白な顔を見ればわかる。







あの男がとり憑くはずなんてないんだ…







何故なら
真夜中の廃病院の地下の霊安室にいたあの男…








あれは生きた人間だもの。







帰りがけ
バイクのエンジン音の合間に公衆電話の呼び出し音が聞こえた。

お終い。