~前置き省略~


それではまずひとつめのお話。

これは先日ライカエジソン東京店で行われた
花少年バディーズのインストアイベント
「稲川タクミの怖くない怪談」で最後に話したお話です。

当日これなかった人からの要望も沢山あったので
今回ここでお話しましょう。

それでは稲川琢磨本番です。

この話はね、私がまだ幼少の頃のお話。
私の父親はとある地方の大学病院で薬剤師をしてましてね

小さい頃は良く母親に連れられて
父親のいる病院に遊びに行っていたんですよ。

その日もね
当直のある父親に
お弁当を届けに行く母親にくっついて病院に遊びに行ってたんです。

夜のまだ浅い時間だったかな…

まだ病院内には人が沢山いてわりと賑やかだったのを覚えています。

最初は母親が父親にお弁当を渡して話しているのに寄り添っていたのですがね、
そこはヤンチャ盛りの幼少児、話を聞いてるのに飽きてしまってね

話す二人に「ジュース買ってくる!」
ってジュースの販売コーナーに向かったんです。

ジュースの販売コーナーにたどり着き
目的のジュースを購入しているとね

ふと目の前に一人の男の子が立っていて
こっちに向かって笑顔で手招きをしているんです。

普段病院内で子供とすれ違う事は沢山あったのでね

誰だろう?
とは思いつつも手招きする男の子の方に歩いて行ったんです。

するとね、俺が近づいた分だけ、その男の子は遠ざかるんです、

そしてまた笑顔で手招きをする。
後はずっとそれの繰り返し。

医局の前を通りすぎ…

両親が会話している待ち合い室を通りすぎ…

やがて一つの下り階段の前に。

当然のように男の子は下り階段を降りていく。

もちろんそれについていく。

そして階段を降りた先で男の子が一つの部屋に入って行くんです。

もちろん後に続き部屋に入りました。

するとね、部屋の中には男の子がいないんです。

かわりに一つのベッドと
顔に白い布を被せられ横たわる何か。

そう、そこは霊安室だったんです。

そこで初めて恐怖を感じたんですがね
何か変な使命感みたいなものがあってですね、
その白い布の中の顔覗いてみたんです。

するとね…

ニィ~っと…

本当に背筋が凍りつくような、
満面の笑みを浮かべた男の子の顔がそこにあったんです…

あまりの恐怖に腰を抜かしそうになりながら
両親の元に逃げました。

いきなり泣きながら子供が走ってくるから両親もビックリしましてね。

「何があった?」って聞いて来ました。

私は今あった事を全て説明しました。

するとね、
父親が青ざめた顔をしながら言うんです。

「それはおかしい。この建物に地下に降りる階段なんてないよ。
そもそも地下室自体がないよ。霊安室にしても全く別の場所にあるよ」

…そんなはずはないんです!

たった今見てきた事だから。

私は父親を引き連れて今逃げ帰って来た道を戻りました。

ここを曲がればさっきの下り階段があるはず…





無いんです。

そこはただ行き止まりな壁。

確かについさっきまではあったのに。

不思議な事ってあるんですね。

しかしあの男の子は一体…。

二つ目のお話。

車で各地方にいく皆さんはご存知だと思われる
東名高速道路の「浜名湖」というパーキングエリア。

この「浜名湖」パーキングエリアは全国でも有名なとても大きなパーキングエリアでね
名前の通り浜名湖に隣接して出来ていて

パーキングエリア内から浜名湖の方に降りていく階段があって
そのまま浜名湖観光が出来たりするのです。

僕らも関西方面に行く時は必ずと言っていいほど立ち寄るパーキングエリアなんですが

ここね…

いわゆる霊的なものが出ると有名な場所でもあるんです。

パーキングエリア自体には何の問題はないんですがね…
浜名湖と隣接している事に問題があるんです。

浜名湖って実は自殺の名所としてちょっと知られている所でね

今でこそ、ある程度の距離で冊が出来て湖自体に近づけないからいいものの
柵が出来るまではね…

大変だったらしいです。

だから表向きは子供とかが落ちたりしたら危ないからとされて設置された柵も…
実は自殺対策だったのではないか、

しかも、
浜名湖の水の流れのせいなのか
ここで入水自殺した死体は必ずと行っていいほど
このパーキングエリアの方の岸に上がってしまうのです。

そんなものだからやっぱり集まってしまうんですね…

だからね、

昼間はまだいい。
でも夜はあのパーキングから浜名湖に繋がる下りの階段…

あの階段は降りない方がいい。

俺、一度だけ夜に
それも一人で降りた事あるんです。

今考えるとなんでそんな事したのか不思議なんだけど
そういうのに敏感な俺は多分呼ばれてしまったんだろうなと思います。

そして降りた先にみた光景はね、悲惨でしたよ…

湖の中から

沢山の顔や手が、それこそ湖中にびっしり出てるんです。

一体何人の思いがここに残ってるんだろう

これ以上ここにいたら下手したら

連れてかれる! と思ってね、すぐに逃げましたよ。

だからねもう一度忠告しますよ

夜の深い時間にあの階段は降りない方がいい。

興味本意で降りていくと
連れてかれるかもしれません。

お終い。