乳製品の安全性は、どうやって保たれているのか?HACCP制度とは何か?乳製品業界でのHACCPの重要性とは?食品検査の専門家が、乳製品の安全性を確保するためのHACCPの実践方法をわかりやすく解説します。この記事を読むことで、乳製品の品質向上のヒントを得ることができます。

 

 

  HACCP制度とは 

 

HACCP(ハサップ)とは、食品の安全を確保するためのシステムのことを指します。この制度は、食品製造過程での危害要因を特定し、それを管理・監視することで、食品の安全性を高めることを目的としています。

 

 HACCPの基本的な考え方 

 

HACCPの基本的な考え方は、食品製造の各工程での危害要因を事前に特定し、それを管理する「管理点」を設定することです。これにより、問題が発生した場合でも迅速に対応し、食品の安全を確保することができます。

特に、乳製品のような微生物の繁殖が容易な食品では、このHACCPの考え方が非常に重要となります。

 

 HACCPの重要性 

 

HACCPの重要性は、食品安全の確保だけでなく、消費者の信頼の獲得にも繋がります。乳製品業界においても、HACCPは必須のシステムとなっています。微生物検査の専門家としても、HACCPの導入は乳製品の安全性向上に不可欠だと考えています。

HACCPは汚染を防ぐための具体的な対策を策定し、それに基づいた衛生基準の遵守状況を定期的に記録・管理します。この記録管理の取り組みにより、もし汚染が起こった際には、その原因を的確に特定し、迅速かつ適切な措置を講じることが可能となります。

 

  乳製品業界におけるHACCPの取り組み 

 

乳製品業界において、HACCPは食品の安全性を確保するための重要な取り組みとなっています。特に、微生物の繁殖が容易な乳製品においては、HACCPの導入と適切な管理が必要不可欠です。以下では、乳製品業界におけるHACCPの取り組みについて詳しく説明します。

 

 生乳の取り扱いとHACCP 

 

生乳は、微生物の繁殖が非常に容易な食品であり、その取り扱いには十分な注意が必要です。HACCPの考え方を取り入れることで、生乳の収集から加工までの各工程での危害要因を特定し、それを管理することができます。特に、収集や運搬の際の温度管理や清潔な環境の確保は、微生物の増殖を防ぐために重要です。

 

 乳製品の製造過程でのHACCPの適用 

 

乳製品の製造過程においても、HACCPは欠かせません。製造工程の各ステップでの危害要因を特定し、それを管理することで、製品の安全性を確保することができます。例えば、発酵や加熱処理の際の温度や時間の管理は、製品の品質と安全性を保つために非常に重要です。

 

 乳製品販売とHACCP 

 

乳製品の販売段階でも、HACCPの取り組みは継続されます。特に、保存温度や賞味期限の管理は、消費者に安全な製品を提供するために不可欠です。また、販売店舗においても、HACCPの基本的な考え方を取り入れた衛生管理が行われています。

 

 乳製品製造業におけるHACCPプランの要点

 

2021年6月、牛乳に関連する食中毒事件が発生しました。この事件は、機器の故障による牛乳の加熱殺菌不足が原因であったとされています。しかし、HACCP(ハサップ)に基づく衛生管理が完全に実施されていたにも関わらず、このような事故が発生したことは大きな問題となりました。


乳製品製造業におけるHACCPプランの要点として、以下の点が挙げられます。

  • 危害要因の発生要因:殺菌温度の低下により、病原微生物が生き残る可能性がある。
  • 管理手段:UHT殺菌を用いて、温度と時間(流量)を管理する。
  • 管理基準:加熱殺菌温度は125℃以上とする。
  • モニタリング方法:自動温度記録計や現場温度計を使用して、殺菌開始時、終了時、および作業中の1時間ごとに温度を確認し、記録する。
  • 改善措置:管理基準を逸脱した場合の対応策として、殺菌器内の乳の廃棄、原因の究明、ラインの洗浄など。

乳製品製造業におけるHACCPの実施は、消費者の安全を確保するための重要なステップであり、適切な管理とモニタリングが不可欠です。

 

  乳製品に関するHACCP手引書 

 

乳製品業界において、HACCP手引書は製造から販売までの各工程での食品安全管理を実践するための重要なガイドラインとなっています。この手引書は、乳製品の特性を考慮した上で、HACCPの原則に基づいて作成されており、業界のスタンダードとして広く利用されています。

 

 手引書の内容と目的 

 

HACCP手引書の内容は、乳製品の製造・加工・販売に関連する危害要因の特定、それらの管理点の設定、及びそれらの監視方法などが詳細に記載されています。

手引書の主な目的は、乳製品の安全性を確保するための具体的な手順や方法を提供することです。これにより、乳製品業界における食品安全管理の水準を向上させることを目指しています。

▶︎HACCP の考え方を取り入れた 牛乳・乳飲料製造の衛生管理のための手引書

 日本乳業協会|厚生労働省

 

 手引書の利用方法 

 

HACCP手引書の利用方法は、まず手引書を熟読し、その内容を理解することから始めます。次に、自社の製造工程や設備、製品の特性などを考慮しながら、手引書に記載されている手順や方法を実践に移すことが求められます。

また、定期的な研修や教育を通じて、従業員の理解と実践を深めることも重要です。この手引書を適切に利用することで、乳製品の安全性を一層高めることができます。

 

  よくある質問 

 

乳製品業界におけるHACCPの取り組みに関して、多くの方々から様々な質問が寄せられます。以下では、これらの質問に対する答えを食品微生物検査の専門家の視点からわかりやすく解説します。

 

Q. 乳製品業界でのHACCPの重要性は? 

A. 乳製品業界におけるHACCPの重要性は非常に高く、これは乳製品の特性上、微生物の繁殖が容易であるためです。HACCPを導入することで、製造から販売までの各工程での危害要因を特定し、管理することができ、乳製品の安全性を確保することができます。

 

Q. 生乳の取り扱いにおけるHACCPのポイントは? 

A. 生乳の取り扱いにおけるHACCPのポイントは、収集や運搬の際の温度管理や清潔な環境の確保です。これにより、微生物の増殖を防ぐことができます。また、収集地点や運搬方法によっても管理点が異なるため、それぞれの状況に応じた適切な管理が求められます。

 

Q. 乳製品のHACCP手引書をどこで入手できるか? 

A. 乳製品のHACCP手引書は、乳製品業界団体や関連機関のウェブサイトで公開されていることが多いです。また、専門の書籍やセミナーなどでも入手することができます。

 

Q. 乳製品販売時のHACCPの注意点は? 

A. 乳製品販売時のHACCPの注意点は、製品の保存温度や賞味期限の管理です。特に、冷蔵保存が必要な製品は、適切な温度での保存が重要です。また、賞味期限を過ぎた製品の販売は避けることが求められます。

 

Q. HACCPと乳製品の安全性の関係は? 

A. HACCPと乳製品の安全性の関係は密接であり、HACCPの原則に基づいて乳製品の製造・販売が行われることで、製品の安全性が確保されます。HACCPの取り組みを通じて、乳製品の危害要因を管理し、消費者に安全な製品を提供することができます。

 

 

乳製品の安全性は、私たちの健康を守るための基盤となります。HACCP制度を適切に活用することで、乳製品の安全性と品質を確保することができます。この記事を通じて、乳製品業界の最前線で活躍するための知識とスキルを身につけ、消費者に安心と信頼を提供しましょう。