食品製造業者の皆様、HACCP認証取得は複雑に感じるかもしれませんね。この記事では、食品微生物検査の専門家が、認証取得のメリットとステップバイステップのプロセスをわかりやすく解説します。安全な食品製造のための確かなステップを、一緒に踏み出しましょう。

 

 

  HACCP認証とは


HACCP(ハサップ)は、食品の安全を確保するための国際的な基準の一つです。食品製造過程での危害を分析し、重要な管理ポイントを特定することで、食品の安全性を高めることを目的としています。

 

 HACCP認証の定義と目的

 

HACCP、すなわち危害分析重要管理点、は食品安全管理のためのシステムです。食品製造の過程で現れうる危険要因を事前に特定し、それらをコントロールすることで、食品の安全を確保しようとするものです。

このHACCPに基づいた衛生管理を実施していることを第三者が認めた事業者に対して与えられる資格のようなものがHACCP認証です。

HACCP認証の目的は、第三者によって審査された結果、「この会社はちゃんとHACCPを実施しています。」ということが認められた証なのです。

 

 HACCP認証の重要性とメリット

 

HACCP認証の取得は、食品製造業者にとって多くのメリットをもたらします。

まず、審査合格にはHACCPシステム全体が適正に機能していることが前提条件であるため、管理基準とおりに現場の作業が行われて記録があるか、手順書を含めて文書管理に問題ないかなど自社の管理状態をチェックしてもらえます。

その結果、製品の安全性と品質が向上し、それによって顧客からの信頼を得ることができます。また、食品安全管理が体系化されることで、製造過程におけるリスクを最小化し、万が一の事故やクレームが発生した場合も迅速かつ適切に対応することができます。

 

  HACCP認証の種類

 

HACCP認証には、いくつかの種類と特徴があり、それぞれの業界や企業のニーズに合わせた認証が存在します。食品安全を確保するための基本的な原則は共通していますが、認証の取得基準や評価基準にはバリエーションがあります。これらの違いを理解し、自社に最も適した認証を選ぶことが重要です。

 

 地域HACCP(地方自治体)

 

地域HACCPは、各地方自治体が独自に設定した基準に基づいて審査を行う認証です。

各自治体が独自の基準を持っているため、認証の取得難易度や基準の厳格さにはばらつきが見られます。一方で、公的な団体が発行する認証であるため、企業が外部に対してその品質をアピールする手段としては非常に効果的です。

 

 総合衛生管理製造過程(厚生労働省)

 

この認証は、厚生労働省が推進するHACCPの普及を目的としています。厚生労働省が定めた基準を満たすことが求められるため、信用力が高いとされています。

国の基準をクリアしていることが証明されるため、安全性に対する信頼を得やすくなります。

※令和2年5月31日をもって総合衛生管理製造過程の承認制度は廃止になりました。

 

 業界団体HACCP

 

業界団体HACCPは、特定の食品製造業界、例えば製麺業界や製菓業界、食肉加工業界など、その専門性に特化した認証です。この認証は、各業界団体が独自に定めたHACCPの基準に基づいており、業界特有の知識や経験を持つ専門家たちによって基準が設定され、その業界における具体的なリスクや課題に対する審査が詳細に行われます。

 

 民間HACCP(民間企業)

 

民間HACCPは、民間企業が独自に設定した基準で審査を行う認証です。そのため、認証を提供する企業ごとに審査基準や審査員のレベルにばらつきがあり、多様性が見られます。企業が自らの基準をアピールする手段として利用されることが多いです。

 

  HACCP認証の取得方法

 

HACCP認証を取得するには、一定のプロセスを経る必要があります。このプロセスは、企業が食品安全管理システムを適切に構築し、実施していることを証明するものです。認証を取得することで、企業は外部からの信頼を得ることができ、ビジネスチャンスを拡大することが期待できます。

 

 取得の基本的な流れ

 

HACCP認証を取得する基本的な流れは、まず自社の製造プロセスにおける危害を分析し、それに基づいて管理計画を作成します。次に、作成した管理計画を実施し、その効果を評価します。そして、認証機関に対して審査を申請し、審査を受けます。審査に合格すれば、認証が交付されます。

 

 必要な書類と手続き

 

HACCP認証を取得するためには、HACCP計画書や手順書、記録フォーマットなど、食品安全管理システムを文書化したものが必要です。また、社内での教育やトレーニングの記録、危害分析のデータ、管理計画の実施記録など、具体的な取り組みを示す書類も求められます。

これらの書類は、審査の際に認証機関に提出し、審査を受けます。

 

 取得期間とコストについて

 

HACCP認証の取得期間とコストは、企業の規模や認証を取得するまでの準備状況によります。一般的に、準備から認証取得まで数ヶ月から1年程度かかることが多いです。コストについては、認証機関やコンサルティング会社、教育・トレーニング費用など、多岐にわたるため、事前にしっかりと計画を立てることが重要です。

 

  よくある質問

 

HACCP認証に関する疑問や質問は多岐にわたります。ここでは、よく受ける質問とその回答をご紹介します。これらの情報が、HACCP認証の理解を深め、取得に向けたアクションをサポートする手助けとなることを願っています。

 

Q. HACCP認証を取得するメリットは?

A. HACCP認証を取得することで、製品の食品安全が国際基準で保証されるため、消費者や取引先からの信頼が増します。また、体系的な食品安全管理が可能となり、製造過程のリスクを低減できます。国際市場での取引や輸出入においても、認証は強力なアピールポイントとなります。

 

Q. HACCP認証の取得にはどれくらいの期間とコストがかかる?

A. HACCP認証の取得期間とコストは、企業の規模や現状の食品安全管理システムの整備度に依存します。一般的には、準備から認証取得まで数ヶ月から1年程度、コストは数十万円から数百万円が目安とされています。

 

Q. HACCP認証の種類とその違いは?

A. HACCP認証には、様々な種類があります。それぞれの認証には、適用される基準や評価項目が異なり、取得の難易度や認知度も異なります。

 

Q. HACCP認証取得の流れは具体的にどのようなものか?

A. HACCP認証の取得は、大まかには危害分析、重要管理ポイントの特定、管理計画の策定・実施、記録・文書の整備、内部監査、そして認証機関による審査のプロセスを経ます。

 

 

HACCP認証は、食品製造業者にとって信頼と品質の証です。この記事を通じて、認証取得のプロセスやメリットを理解いただけたことを願います。食品安全を守り、業界での競争力を高める一助として、HACCP認証取得をぜひご検討ください。安全な食品製造の未来を、共に築いていきましょう。