食品産業に従事する方々やHACCPに興味のある方へ、厚生労働省の公式ガイドラインとHACCPの基本原則を食品微生物検査の専門家目線でわかりやすく解説します。この記事を通じて、HACCPの導入や運用に関する正確な知識を得ることができます。安全な食品提供のための第一歩として、ぜひ参考にしてください。
HACCPとは
HACCP(ハサップ)は、食品の安全を確保するための管理システムです。厚生労働省もこのシステムを推奨しており、食品産業における安全管理の基本となっています。ここでは、その定義や原則、種類について解説します。
HACCPの定義
HACCPは「Hazard Analysis and Critical Control Point」の略で、危害分析と重要管理点を意味します。このシステムは、食品製造の各段階で危険因子を特定し、それをコントロールすることで食品の安全を確保します。
厚生労働省は、このシステムを食品産業者に導入することで、食品の安全管理を徹底するよう推奨しています。
HACCPの7原則
HACCPは以下の7つの原則に基づいて構築されます。
- 危害分析を行う
- 重要管理点を特定する
- 重要管理点での危険因子をコントロールするための基準を設定する
- 重要管理点での監視手順を確立する
- 適正手順が守られているかどうかを確認するための検証手順を確立する
- 記録と文書化を行う
- 検証と再検証を行う
HACCPの種類
日本では2020年6月1日から、食品衛生法の改正により「HACCPに沿った衛生管理の制度化」が開始され、2つの異なるアプローチが導入されました。これらは以下のように区分されます。
HACCPに基づく衛生管理
- 基準: コーデックスのHACCPの7原則と12手順に基づく国際標準。
- 対象: 主に大規模な事業者。
- 特徴: 「基準A」とも呼ばます。
コーデックスとは?
コーデックス・アリメンタリウス(Codex Alimentarius)の略で、ラテン語で『食品基準』の意味。コーデックス委員会は、1962年FAO(国連食料農業機構)とWHO(世界保健機構)によって設置された。消費者の健康を守り、世界共通の基準を設定することによって食品の貿易の公正化を図ることを目的としている。
- 基準: 厚生労働省が新たに設立した日本独自の基準で、HACCPの基本的な考え方を取り入れています。
- 対象: 一般の飲食店や小規模な事業者。
- 特徴: 「基準B」とも呼ばれ、HACCPの簡易版として位置づけられています。この基準は、小規模な事業者でも取り組みやすいように設計されています。
このように、日本でのHACCPの導入は事業の規模によって異なるアプローチが取られており、それぞれの事業者が自身の規模とニーズに最適な方法で食品衛生管理を行えるようになっています。この新しい制度は、食品安全を確保しながら、さまざまな規模の事業者が食品衛生管理を行いやすくする目的で導入されました。
厚生労働省によるHACCPの取り組み
厚生労働省は、食品安全の確保を目指して、HACCPの導入を推進しています。このセクションでは、その取り組みの具体的な内容について、解説します。
制度化とその進捗
HACCPは、食品の安全を確保するための国際的な基準として広く認識されています。しかし、日本はその導入に関して他の多くの国々よりも遅れを取っています。具体的には、アメリカやカナダ、オーストラリアでは1990年代から、EUでは2006年から、そして韓国では2012年から段階的にHACCPが義務化されてきました。
日本でのHACCP義務化は2020年からなので海外諸国に比べて、かなり出遅れていると言わざるを得ません。
導入が遅れた要因
日本がHACCPの導入に遅れを取った理由は何でしょうか。
主な要因は、HACCPの導入に伴う高いコストと、それによって引き起こされる事業者からの反発でした。HACCPの導入は、製造工程の変更や新しい検査システムの導入など、企業にとっては大きな負担を意味します。
しかし、日本国内でもHACCP導入の必要性に対する認識が高まり、2018年5月に政府は食品衛生法の改正案を国会に提出しました。この改正案は、食品事業者全てにHACCPの導入を義務付けるもので、2018年6月に可決され、2020年6月から、全ての食品事業者はHACCPに基づく衛生管理を行うことが義務付けられました。
この法改正は、日本の食品安全基準を国際基準に合わせる重要な一歩となり、消費者の安心と信頼を確保するための基盤を築くことに寄与しました。
資料とガイドライン
HACCPの導入と運用には、正確な知識と理解が必要です。このセクションでは、厚生労働省が提供する資料とガイドラインについて、その概要と利用方法を解説します。
入門のための手引書
厚生労働省は、HACCPの導入を支援するためのガイドラインを提供しています。入門のための手引書は、HACCPの基本的な知識を習得するための資料です。ここでは、HACCPの概念や原則、そして実際の導入例などがわかりやすく説明されています。
この手引書を利用することで、食品産業者はHACCPの基本を理解し、導入の準備を進めることができます。
▶︎ HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書|厚生労働省
リーフレット
リーフレットは、HACCPの概要や重要なポイントを簡潔に説明した資料です。これは、食品産業者だけでなく、一般の消費者に向けても提供されることがあります。リーフレットを通じて、食品の安全性を高めるHACCPの重要性を広く知らせることが可能です。
よくある質問
HACCPに関する知識を深める上で、いくつかの基本的な質問がよく寄せられます。このセクションでは、それらの質問に答えていきます。
Q. HACCPの基本原則は何ですか?
A. HACCPの基本原則は7つあります。それは、危害分析、重要管理点の特定、基準の設定、監視手順の確立、検証手順の確立、記録と文書化、そして検証と再検証です。これらの原則を遵守することで、食品の安全を確保することができます。
Q. 厚生労働省が提供するHACCP関連の資料はどこで入手できますか?
A. 厚生労働省が提供するHACCP関連の資料は、厚生労働省の公式ウェブサイトからダウンロードすることができます。また、関連するガイドラインや手引書、リーフレット、マニュアルなどは、同サイト内の関連ページから詳細な情報を得ることができます。
Q. HACCP認証を受けるにはどうすればいいですか?
A. HACCP認証を受けるには、まずHACCPの7つの基本原則を理解し、それに基づいた食品安全管理システムを構築する必要があります。次に、厚生労働省が設定した基準を満たすことが求められます。認証を受けることで、企業は消費者に対して食品の安全性を保証できます。
この記事を読んで、HACCPと厚生労働省の関係に関する基本的な知識を得ることができました。この記事で提供した情報が、あなたの食品安全管理に役立つことを心より願っています。HACCPの導入は食品産業の未来を担う重要なステップです。厚生労働省のガイドラインを参考に、安全で信頼できる食品提供を目指しましょう。