食品の微生物検査は、私たちが日々摂取する食品の安全性を確保するための重要な要素です。この記事では、その基準値や、そして標準試験法について、専門家の視点から詳しく解説します。
食品の微生物検査の重要性
食品の安全性を確保するためには、微生物検査が欠かせません。食品に含まれる微生物は、食品の品質を左右するだけでなく、場合によっては人の健康を脅かす可能性もあります。そのため、食品の微生物検査は、食品の安全性を確保する上で非常に重要な役割を果たしています。
微生物検査では、食品に含まれる微生物の種類や数を調べ、その結果を基に食品の安全性を評価します。その評価基準となるのが、微生物検査の基準値や標準試験法などです。これらの基準は、食品の安全性を確保するためのガイドラインとなります。
これらの基準を理解し、適切に活用することで、食品の安全性を確保することが可能となります。
一般生菌数の基準値
食品の微生物検査において、一般生菌数の基準値は重要な指標となります。一般生菌数とは、食品中に存在する微生物の総数を指し、食品の微生物汚染の程度を示す代表的な指標です。これには有害な菌だけでなく、有益な菌も含まれます。この数値が高いと、食品の品質が低下したり、食品が腐敗しやすくなる可能性があります。
一般生菌数の基準値は、食品の種類や保存状態により異なります。
一般生菌数の基準値一覧
一般生菌数の基準値は、食品の種類や保存状態により異なります。例えば、生鮮食品の場合、一般生菌数の基準値は比較的高めに設定されています。これは、生鮮食品が微生物による腐敗や変質を起こしやすいためです。
一方、加熱処理を受けた食品や保存食品の場合、一般生菌数の基準値は低めに設定されています。これは、加熱処理や保存方法により、微生物の数が抑制されるためです。
これらの基準値は、食品の安全性を確保するための重要な指標となります。食品の微生物検査を行う際には、これらの基準値を参考に、食品の安全性を評価することが重要です。
・食品衛生法に記載される微生物検査の一覧表
※食品衛生法を基にまとめたもので、内容を保証するものではありません。詳細は食品別の規格基準|厚生労働省をご確認下さい。
食品の種類 | 微生物基準 |
清涼飲料水 | 大腸菌群:陰性(11.1mL中、LB培地) |
ミネラルウォーター類(殺菌・除菌) | 大腸菌群:陰性(11.1mL中、LB培地) |
ミネラルウォーター類(未殺菌・未除菌、CO2圧が20℃で98kPa以上) | 大腸菌群:陰性(11.1mL中、LB培地) |
ミネラルウォーター類(未殺菌・未除菌、CO2圧が20℃で98kPa未満) | 大腸菌群:陰性(11.1mL中、LB培地) 腸球菌:陰性(11mL中) 緑膿菌:陰性(11mL中) |
粉末清涼飲料(乳酸菌を加えないもの) | 一般生菌数:3,000/g以下(標準平板) 大腸菌群:陰性(1.11g中、LB培地) |
粉末清涼飲料(乳酸菌を加えたもの) | 一般生菌数(乳酸菌を除く):3,000/g以下(標準平板) 大腸菌群:陰性(1.11g中、LB培地) |
氷雪 | 一般生菌数(融解水):100/mL以下(標準平板) 大腸菌群(融解水):陰性(11.111mL中、LB培地) |
氷菓 | 一般生菌数(融解水):10,000/mL以下(標準平板) 大腸菌群(融解水):陰性(0.1mL×2中、デソキシコーレイト培地) |
食鳥卵 殺菌液卵(鶏卵) | サルモネラ属菌:陰性(25g中) |
食鳥卵 未殺菌液卵(鶏卵) | 一般生菌数:1,000,000/g以下 |
食肉製品 乾燥食肉製品 | E.coli:陰性(0.1g×5中、EC培地) |
食肉製品 非加熱食肉製品 | E.coli(最確数):100/g以下(EC培地) 黄色ブドウ球菌:1,000/g以下(卵黄加マンニット食塩寒天培地) サルモネラ属菌:陰性(25g中、EEMブイヨン増菌法+MLCB又はDHL培地) |
食肉製品 特定加熱食肉製品 | E.coli(最確数):100/g以下(EC培地) 黄色ブドウ球菌:1,000/g以下(卵黄加マンニット食塩寒天培地) クロストリジウム属菌:1,000/g以下(クロストリジウム培地) サルモネラ属菌:陰性(25g中、EEMブイヨン増菌法+MLCB又はDHL培地) |
食肉製品 加熱食肉製品 容器包装に入れた後、殺菌したもの | 大腸菌群:陰性(1g×3中、BGLB培地) クロストリジウム属菌:1,000/g以下(クロストリジウム培地) |
食肉製品 加熱食肉製品 加熱した後、容器包装に入れたもの | E.coli:陰性(0.1g×5中、EC培地) 黄色ブドウ球菌:1,000/g以下(卵黄加マンニット食塩寒天培地) サルモネラ属菌:陰性(25g中、EEMブイヨン増菌法+MLCB又はDHL培地) |
鯨肉製品 | 大腸菌群:陰性(1g×3中、BGLB培地) |
魚肉ねり製品 | 大腸菌群:陰性(すり身を除く)(1g×3中、BGLB培地) |
魚肉練り製品に使用する砂糖・でん粉・香辛料 | 芽胞菌:1,000/g以下 |
未冷凍ゆでだこ | 腸炎ビブリオ:陰性(25g中、TCBS寒天培地) |
冷凍ゆでだこ | 一般生菌数:100,000/g以下(標準平板) 大腸菌群:陰性(0.01g×2中、デソキシコーレイト培地) 腸炎ビブリオ:陰性(25g中、TCBS寒天培地) |
ゆでがに 凍結していないもの | 腸炎ビブリオ:陰性(25g中、TCBS寒天培地) |
冷凍ゆでがに | 一般生菌数:100,000/g以下(標準平板) 大腸菌群:陰性(0.01g×2中、デソキシコーレイト培地) 腸炎ビブリオ:陰性(25g中、TCBS寒天培地) |
生食用鮮魚介類 | 腸炎ビブリオ(最確数):100/g以下(アルカリペプトン水、TCBS寒天培地) |
生食用かき | 一般生菌数:50,000/g以下(標準平板) E.coli(最確数):230/100g以下(EC培地) |
生食用(むき身) | 一般生菌数:50,000/g以下(標準平板) E.coli(最確数):230/100g以下(EC培地) 腸炎ビブリオ(最確数):100/g以下(アルカリペプトン水、TCBS寒天培地) |
無加熱摂取冷凍食品 | 一般生菌数:100,000/g以下(標準平板) 大腸菌群:陰性(0.01g×2中、デソキシコーレイト培地) |
加熱後摂取冷凍食品 凍結直前加熱 | 一般生菌数:100,000/g以下(標準平板) 大腸菌群:陰性(0.01g×2中、デソキシコーレイト培地) |
加熱後摂取冷凍食品 凍結直前加熱以外 | 一般生菌数:3,000,000/g以下(標準平板) E.coli:陰性(0.01g×3中、EC培地) |
生食用冷凍鮮魚介類 | 一般生菌数:100,000/g以下(標準平板) 大腸菌群:陰性(0.01g×2中、デソキシコーレイト培地) 腸炎ビブリオ(最確数):100/g以下(アルカリペプトン水、TCBS寒天培地) |
容器包装詰加圧加熱殺菌食品 | 恒温試験:容器包装を35.0℃で14日保持し、膨張または漏れを認めないこと 一般生菌試験:陰性(1mL×5中、TGC培地、恒温試験済みのものを検体とする) |
アイスクリーム | 一般生菌数:100,000/mL以下(標準平板) 大腸菌群:陰性(0.1g×2中、デソキシコーレイト培地) |
アイスミルク | 一般生菌数:50,000/mL以下(標準平板) 大腸菌群:陰性(0.1g×2中、デソキシコーレイト培地) |
ラクトアイス | 一般生菌数:50,000/mL以下(標準平板) 大腸菌群:陰性(0.1g×2中、デソキシコーレイト培地) |
生乳・生山羊乳 | 一般生菌数:4,000,000/mL以下(直接個体鏡検法) |
濃縮乳・脱脂濃縮乳 | 一般生菌数:100,000/mL以下(標準平板) |
牛乳・殺菌山羊乳 | 一般生菌数:50,000/mL以下(標準平板) 大腸菌群:陰性(1.11mL×2中、BGLB培地) |
特別牛乳 | 一般生菌数:30,000/mL以下(標準平板) 大腸菌群:陰性(1.11mL×2中、BGLB培地) |
成分調整牛乳、低脂肪牛乳無脂肪牛乳、加工乳 | 一般生菌数:50,000/mL以下(標準平板) 大腸菌群:陰性(1.11mL×2中、BGLB培地) |
クリーム | 一般生菌数:100,000/mL以下(標準平板) 大腸菌群:陰性(1.11mL×2中、BGLB培地) |
無糖練乳・無糖脱脂練乳 | 一般生菌数:0/g以下(標準平板) |
加糖れん乳・全粉乳等 | 一般生菌数:50,000/g以下(標準平板) 大腸菌群:陰性(0.111g×2中、BGLB培地) |
バター・プロセスチーズ | 大腸菌群:陰性(0.1g×2中、デソキシコーレイト培地) |
ナチュラルチーズ | リステリア:陰性(25g中、EB培地増菌+OxfoedまたはPALCAM寒天培地) |
乳飲料 | 一般生菌数:30,000/mL以下(標準平板) 大腸菌群:陰性(1.11g×2中、BGLB培地) |
はっ酵乳 | 乳酸菌数または酵母数:10,000,000/ml以上 大腸菌群:陰性(0.1mL(g)×2中、デソキシコーレイト培地) |
乳酸飲料 固形分3%以上 | 乳酸菌数または酵母数:10,000,000/ml以上 大腸菌群:陰性(0.1mL(g)×2中、デソキシコーレイト培地) |
乳酸飲料 固形分3%未満 | 乳酸菌数または酵母数:1,000,000/ml以上 大腸菌群:陰性(0.1mL(g)×2中、デソキシコーレイト培地) |
食品微生物検査の基準値と標準試験法
食品の微生物検査では、基準値と標準試験法が重要な役割を果たします。これらは、食品の安全性を評価するためのガイドラインとなり、食品の品質を確保するための基準となります。
基準値とは、食品に含まれる微生物の数や種類が安全とされる範囲を示すもので、これを超えると食品の安全性が問われます。一方、標準試験法とは、食品の微生物検査を行う際の方法や手順を示すもので、これに従って検査を行うことで、国際標準と同等の品質を保証することができます。
標準試験法の詳細
標準試験法は、食品の微生物検査を行う際の方法や手順を示しています。これに従って検査を行うことで、正確な結果を得ることができます。標準試験法には、検査を行うための具体的な手順や、検査結果を解釈するためのガイドラインが含まれています。これらの標準を理解し、適切に活用することで、食品の微生物検査を正確に行うことが可能となります。
NIHSJ法(標準試験法)国際標準試験法と同等性を担保した試験法であると言え、その利用は国際整合が求められる際への活用が期待されます。また、“NIHSJJ(標準試験)法”は、食品の工程管理等への適用が期待される、迅速・簡便法の参照法として利用することで、迅速・簡便法の性能評価への活用も期待されます。
食品微生物検査の分類
食品の微生物検査は、その目的や対象となる微生物の種類により、さまざまに分類されます。大きく分けて、食品の安全性を評価するための検査と、食品の品質を評価するための検査があります。
安全性を評価するための検査では、食中毒菌や腐敗菌など、人の健康に影響を及ぼす可能性のある微生物の存在を調べます。これには、サルモネラ菌や大腸菌など、特定の有害な微生物を対象とした検査が含まれます。
一方、品質を評価するための検査では、食品の風味や賞味期限を左右する微生物の存在を調べます。これには、酵母やカビなど、食品の風味や保存状態に影響を及ぼす微生物を対象とした検査が含まれます。
これらの検査は、それぞれ異なる目的と対象を持っていますが、どちらも食品の安全性と品質を確保するために重要な役割を果たしています。食品の微生物検査を行う際には、これらの分類を理解し、適切な検査を選択することが重要です。
よくある質問
食品の微生物検査については、多くの疑問が寄せられます。以下に、よくある質問とその回答をまとめています。
Q. 一般生菌数の基準値はどのように決まるのですか?
A. 一般生菌数の基準値は、食品の種類や保存状態により異なります。これらの基準値は、食品の安全性を確保するためのガイドラインとなります。基準値を超えると、食品の安全性が問われ、改善が必要となります。
最新の情報については、厚生労働省法令等データベースサービス及び新着法令を参照してください。※厚生労働省法令等データベースサービス
Q. 食品の微生物検査はどのように行われますか?
A. 食品の微生物検査は、食品からサンプルを採取し、それを特定の培地で培養することで行われます。培養後、微生物の数や種類を調べ、その結果を基に食品の安全性を評価します。この過程は、食品衛生法に定められた標準に従って行われます。
食品の微生物検査基準を理解することは、食品の安全性を確保し、健康を守るために重要です。常に新しい情報を確認し食の安全を守りましょう。