「油断した瞬間」というのは、日常の中でふと心の隙が生まれるとき。
私にとってその瞬間は、「趣味」に没頭する時間に訪れる。それは「読書」と「映画鑑賞」だ。静かな夜、リビングのソファに座り、本や映画の世界に浸る時間は、まさに至福のひとときである。
特に、平日の忙しい日々の中で、ようやく迎えた休日前の夜。
仕事から解放され、心の緊張がほぐれる瞬間、私はお気に入りの本を手に取り、映画のリストを眺める。そうして一人だけの静かな夜が始まる。
周りがみんな寝静まった後、一人ソファに座り、心地よい静寂の中で、ページをめくりながら物語の中に入り込む。あるいは、大画面に映し出される映像に吸い込まれるように、映画の世界へと旅立つ。
独りで過ごすこの時間は、まるで現実からの逃避のようだ。
誰にも邪魔されず、自分だけの時間を楽しむ。
映画の主人公が困難に立ち向かう姿に感動し、物語の登場人物の感情に共感する。そして、ふと時計を見ると、もう深夜を過ぎている。油断していると、時間はいつの間にか過ぎ去っているのだ。
ある晩、私は映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を見返していた。ドクの「30年後にまた会おう!」という叫び声に思わず笑いがこぼれる。その後、ふと考えた。「もし、私が過去に戻れるとしたら?」と。
私は、自分の過去を振り返り、もしもあの瞬間に戻れるなら、何を変えるだろうかと想像する。しかし、そんなことを考えていると、結局は今の自分に落ち着くようにも思える。過去に戻って何かを変えたとしても、今の自分の存在はその結果だ。つまり、私たちの人生は常に、自分が最善だと思っていた小さな選択の積み重ねで成り立っている。
そして、ふと笑いがこみ上げる。こんな夜に一人で答えのない事を考えている自分を想像して、少し滑稽に思えるからだ。結局、独りの時間は、そんなささやかな笑いや思索の場でもある。
大げさに言えば人生とは、そんな油断した瞬間に現れる小さな幸せや小さな不幸、小さな笑いや答えのない思索の積み重ねなのかもしれない。