道の邊に、ふと眼を向ければ、
そこに、散り逝くものと、咲き誇らんとするものの物語があった。
祇園精舍… 「祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響あり。 娑羅双樹の花の色 、盛者必衰のことはりをあらはす。 おごれる人も久しからず。唯春の夜の夢のごとし。」と、口説き起こし、移ろい逝くことの“もののあはれ”を琵琶の弦の響きのうちの宿して、掻き立てゆくのは、謂わずと知れた平曲ではあるが、想えば、眼に映る森羅万象のいづれの営みの姿のうちにも、散り逝くものと、咲き誇らんとするもの物語は、鏤められているものだから、それがゆえに、個々の“もののあはれ”は次第に共鳴し、果てには、大きく地が吼え、天も雷同するような、壮大な物語さえ紡ぎだすのだ。
畑にでていると、「もうすこし後でもいいか。」と先送りにしていた草も、どんどん大きくなり、無上の味覚を堪能させてくれた白菜の“ふくだち菜”も、陽気が上り調子になるとともに、だんだんに菜類の、にが味をすこし帯びてきた。
一瞬たりとも同じ瞬間は無く、一瞬たりとも立ち止まる命はいない。
頭の上で、切り裂くような羽音がしたと思ったら、カラスを追って鳶がもつれるように飛んでゆく。
たぶん、カラスが鳶の巣か何かを襲ったのだろうか。
春一番に蒔いた葉大根が芽を出していた。
桑の芽も徐々に動き出す。
諸行無常
あしたは、きょうと、全く違っている。
