世界では、なんだか怪しげなことが進行しておりますが・・・
参加しなければ広大な自由貿易地域から排除されてしまう。昔は自動車やテレビなど最終製品の貿易が主であったが、現在は中間財といわれる部品や素材の貿易が全体の貿易の半分以上を占めているといわれる。TPPに参加せず、巨大なサプライチェーンから排除されれば、日本の、特に部品などを供給している中小企業にとって大変な問題だ。
・・・・と、TPP推進の立場を執る社団法人経済同友会の、副代表幹事や第29代日本銀行総裁などを歴任した福井俊彦氏が理事長を務められる財団法人キヤノングローバル戦略研究所の研究主幹でいっらっしゃいます、山下 一仁氏が説いている。
つまり、山下氏が仰られるように、「現在は中間財といわれる部品や素材の貿易が全体の貿易の半分以上を占めている。」というような実情ならば、TPPは、「中間財といわれる部品や素材の自由貿易圏を構築することを目論むこと」だと言えよう。
けれども、そのような、中間財や素材の自由貿易圏があろうとも、最終的には、どこかで最終製品として組み立てて一般市場の場で販売しなければ収益を得られない。
だから、その場合、ターゲットとなるマーケットを、TPP自由貿易圏の内に求めているのか、外に求めているのかで話が大きく違ってくる。
内に求めているのであれば、TPP自由貿易圏の中に、資本・資源から技術や人材、そしてマーケットをも囲み込んだ排他的な経済圏を先ずつくって、そのメンバーの国々だけで、永続的に持続できる金融・経済・文化・学術・政治の共栄圏にTPP自由貿易圏を発展させてゆくというところを目論んでいるのであろう。
外にマーケットを求めているのであれば、TPP自由貿易圏に参加するメンバーの国々による巨大な企業体のようなイメージのシステムを構築して、その金融・経済・文化・学術・政治の全力を戦略的に用いて、他のマーケットを侵攻することによって、自らの自由貿易圏を維持してゆくということになるのだろう。
結局、この両者のいづれの形をとるにせよ、そのTPP自由貿易圏に参加するメンバーの国々の担う役割と求める利益がバランスの取れたものであると云う条件が調わないと、全体として力を生まないから意味を成さない。
特に、前者のマーケットをTPP自由貿易圏の内に求めている方向性であれば、メンバーの国々同士の信頼性とかシンパシーとか、共有の親和性を基盤として、TPP自由貿易圏の文化というようなものを創り上げなければ、それは単に、どこかの国を出し抜いてマーケットとして食い物にしようとするババ抜きゲームのようなことにしかならないという危惧が免れ得ない。
例えば、EUも、ある意味では、ヨーロッパ共同体という自由貿易圏のかたちを目論んでいるのだろうけれど、EUの場合なら、ヨーロッパというアイデンティティーや文化性を大切にした、そして、自由貿易圏内のユーロという通貨を新たに設けた。
TPPの場合なら、そういうTPP参加国同士のアイデンティティーや文化性という点や、共通の通貨はどうするのだろうか。単にドル建てでということなら、それはTPP参加国が必死になって米国ドルという通貨の信頼性を買い支えるということにしかならないのではなかろうか。?
EUの場合なら、それは、そこには、いい意味でも、悪い意味でも、ヨーロッパという共通するアイゼンティティーに根ざしているから、文化圏としての合理性があると、アジアの片隅から見ていて思う。
けれど、TPPには、参加国同士に、そういう文化的な基盤なんてないではないか。!! なのに、一足飛びに、そういう国家の主権に属する事をも抑制的に扱える「契約」など安易にしていいものだろうか。?
TPP推進派の人たちは、そこのところを、誰にでもわかるように説明して欲しいものです。
また、件の山下氏は、このようにも言う。
『農業問題ではない、農協問題だ』
関税を下げても、アメリカやEUがやっているような直接支払い方式で農家を保護すれば、農家は困らない。しかし、農協は農産物の価格が下がると、販売手数料が減収となり、農協が困ることになる。本当はTPPと農協問題であり、だから農協は医療業界や土木業界を巻き込んで反対運動を展開している。政治家も、農業票を失う恐怖心から農協には反対しにくい。特に小選挙区制下での接戦の場合、農業票はたとえ少なくなったとはいえ、選挙結果を左右しかねかねない懸念がある。
穀物メジャーという存在の世界戦略を考慮すれば、わが国には「農協」という穀物メジャーに対して、カウンターな存在があったが故に、その防波堤の役割を果していることを忘れてはならないと想います。そのことを評価しない立場から言えば、山下氏の論じるような「農業問題ではない、農協問題だ。」ということになり、農協を解体して、穀物メジャーにも日本国内で事業展開する自由を与えようと言うことになるのでしょうが、・・・
山下研究主幹は、TPPに対する基本認識として以下のように述べ、日本にはTPP参加以外に選択肢はないと強調した。1)日本が今のペースで経済成長すると、2020年には一人当たりGDP(国内総生産)が韓国、台湾に追い抜かれる。それを防ぐためには海外と結びついて、もう一段高いレベルの成長をする必要がある。
2)貿易の利益は基本的に消費の利益にあるが、被害を受ける農業や輸出産業が儲かるという生産者サイドの話が中心になっている。
しかし、山下氏が、ご指摘の2020年と言うポイントは、同時に『日本の人口構成の急激な変化に伴って起きる「2020/30年問題」』として有名な既知の高齢化問題が深刻になってゆくポイントと重なり合います。日本の一人当たりGDPが2020年に韓国、台湾に追い抜かれると予見されているのは、日本の高齢化社会化に伴う、労働者の高齢化とも無縁ではないので、TPPに参加したからと言って、仰るような『もう一段高いレベルの成長』が無条件に得られるとは思えません。
だから、このようなことは、問題のすり替え、原因のすり替えの論理だと思います。
日本が、深刻な高齢化と少子化による世代間バランスの崩壊を迎えることを、政府はどの時点から予見していたのかというところについて、わたしはわかりかねますけれど、少なくとも、わかった時点から、着実にて手立てを講じておかないと、二、三年の努力で、どうにかできる内容ではありません。
そして、もっと根本的には、若者が夢を持てる社会、若者が積極的に役割を担える社会をつくってこなかったというところに、日本の大きな問題があると思います。
もし、日本がそういう社会であれば、2020年以降、GDPが下降しても、それなりの国のあり方と言うものが求められるのではないでしょうか。?
『ずっと、繁栄し続けた国などないということを、歴史が語っています。』
「何を求めて、何を実現すべきか。」
「今、ほんとうに考えなければいけない時期に来ていると思います。」
「何を求めて、何を実現すべきか。」
「今、ほんとうに考えなければいけない時期に来ていると思います。」
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将来の高齢者人口及び高齢化率、労働力人口の将来予測
グローバルなフード・システムの視点から論じて、種子・金融・農業・エタノール燃料・食品加工関連などの多方面におよぶ事業多角化を通し、穀物メジャーの世界の食料供給システムに占める地位が以前に比して格段に高まり、川上から川下までの市場支配力を強めている。との認識に基づく危機感が指摘されている。
「穀物需給の国際的展開」- 農林中金総合研究所
穀物メジャーに関する一考察(1)『農業研究』第23号(2010年)p.1~84
穀物メジャーに関する一考察(2)『農業研究』第24号(2011年)p.87~178
The Office of the United States Trade Representative (USTR) TPPブログ

