山村から・・・(その1) | ーとんとん機音日記ー

ーとんとん機音日記ー

山間部の限界集落に移り住んで、
“養蚕・糸とり・機織り”

手織りの草木染め紬を織っている・・・。
染織作家の"機織り工房"の日記



ーとんとん機音日記ー-山村から・・・01
【台風十二号による坂本川流域での山崩れ】


先日の台風十二号で、
紀伊半島の山地を中心に甚大な被害が出ていることは、
皆さんもご存知のことでしょう。


幸いにして、うちのほうでは、人的な被害は無かったものの、この辺りで“やまぬけ”と呼ばれる山崩れや、倒木、河川異常な増水、停電、電話ネットなどの通信網の切断・・・なども起きました。

ーとんとん機音日記ー-山村から・・・02
【津市美杉町石名原.払戸の土石流】


そして、近くの集落(津市美杉町石名原 払戸)では、9月4日午前10時半ごろ伊勢地川の土石流で川沿いの二軒の家が直撃を受けて埋まったのですが、救出が早く大事には至りませんでした。

ーとんとん機音日記ー-山村から・・・03
【津市美杉町石名原.土石流に埋まった水田】


けれども、秋の収穫をひかえて、黄金の彩りも誇らしげに、たわわに稔っていた谷間の多くの棚田が、土石流に埋もれてしまいました。


丹精こめてつくっていた人たちの落胆の様子が目に浮かび、
なんとも言いようの無い気持ちに襲われます。


ーとんとん機音日記ー-山村から・・・03
【津市美杉町石名原.山の稜線から大きく崩落している地すべり痕】


また、旧美杉村から奈良県の御杖村や名張市の方へ向かう、
国道368号線の橋も土石流で流されてしまったので、
大きく細い山道で迂回して、
三多気集落の方を廻らないとダメなようになってしまっています。


「嫁に来て50年になるけれど、こんなことは、はじめて。」と仰る方がいるような、未曾有の出来事でした。

この辺りの地域では、谷水を引き込んだものと、井戸水の両方があるところも多く、普通では水に困ることは先ず起きないのですが・・・
でも、台風十二号のときは、谷水は濁ってダメ。井戸水は、停電しているのでポンプが動かずにダメという状態で、数日間は飲料水にも困りました。

それに、台風12号の最中は、現在上簇を済ました秋蚕をまだ飼っている時だったから、採り溜めている桑が台風が過ぎるまで足りるのかも心配でした。


熊野の紀伊山地ほどではありませんが、このあたりも、いわゆる急斜面地が多いところです。


○「谷水が黒く濁ってきたら、その奥で“やまぬけ(山崩れや)”を起こした証拠。」
○「“やまぬけ(山崩れや)”が起きるときには、きな臭いような嫌なにおいがする。」
○「山から出ている水が、急に濁ってきたり、止まったりすると、地滑りが起きる。」

・・・このようなときは逃げなければいけない。


そういう山で暮らす知恵を地元の方から教わりました。

それと、うちの集落の自治会長さんは80歳を超えている方なのですが、台風の小康状態の合間に被害状況の確認に歩いて廻られたりする姿や、都会ではあまり馴染みのない消防団の人たちも、ほぼ寝ないで集落の状態を気遣う姿に、“集落の力”というものを強く感じました。


山で暮らす知恵を肌で知っているお年寄りや、“集落の力”というものが山村の宝なのです。