朝起きてテレビを見ると、今日は午後から雨が降ると言う。
窓から外を見る限り、とても降りそうにはない。然し、ここは天気予報を信じて傘を持って行くことにした。
週末の休日、外出をして本や服を買おうと数日前から決めていたのだ。朝食を片付け、支度を始めた。整髪料を使って髪を立てたり、普段着ない服を着てみたりと行く前から楽しみが尽きなかった。
支度を終え玄関を出る。
『やっぱ必要なのだろな』
天気が余りに良いものだから、躊躇いもあったが傘を手にしバス停へと向かう。
外出日和の日を浴びながら、バス停に着くと間もなくバスが到着。乗車すると、人はまばら、適当に真ん中辺りに座りバスに揺られて駅へと向かった。
駅前のターミナルに着くと、まだ朝は九時頃だというのに人が多く行き交っていた。
大きく欠伸をした後、口が半開きになり心で『あっ!』と叫んでしまった。
『傘バスに忘れた』
雨は生憎降ってはいない。降りそうな気もしないでもないが、電車に乗るのに時間も若干あるしコンビニで傘を買うことにした。
店を出ると傘の他に、ガム、コーヒー、スポーツ新聞と予定に無いものを購入し、電車に乗って目的地へと向かった。
睡魔が襲い、眠気眼で降車し切符を改札機に入れた瞬間『はっ!』として後ろを意味もなく振り向く。
『傘がない…』
電車に忘れたことに気付くが、時既に遅し。外に出ると、曇天の空が街を覆っていた。
髪を立てた男が、不安そうに突っ立っている。
歩く人を見渡すと、意外に皆傘を持って来ていたことに驚いた。
『あの天候でも、ちゃんと持ってくるのだな』
己もその一人だった。
さて、どうするか?
取り敢えず、目的の一つ本屋へと向かった。
『良いなぁ、やっぱこの空間』
思わず雰囲気に酔いしれ、本を見ていくと雑誌のコーナーで傘が一本置いてあった。
誰かが忘れたのだろう、そう思いながら傘へと近づくと…『M美ー!あったよー!』一人の女性が拾い上げ、ホッとした表情を見せた、もう一人の女性に手渡した。
『二本の傘は今頃どーなってるかな』
今更しょうもない事を思ったりして、目的の本を見つけ購入した。
普段なら長居する本屋を早々に切り上げ、再び外へ出ると降りそうで降っていない空だった。
コンビニで、傘を購入。
そして、服を買い昼食には牛丼を食べることにした。
腹も減っていたから、八人の客の中で七番目に来店をし、一番で食い終わるという早食いで店を後にした。
『中古本でも見に行こうかな』
時間もあるし、何か良い本にでも出会さないかと、期待も寄せながら店内へと入った瞬間『うあっ!』と思わず声が出てしまった。
周囲の何人かが、その声に気付き此方を向くが、視線を落とし奥へと進む。
『くは~っ、また傘忘れたよ』
小声でぼやいていると、子供が黙って見ていたものだから、デッカイ欠伸をして歴史コーナーへ歩を進めた。
『せめて、これだけでも探していこう。何かないか何かないか何かないか…』
[戦国時代~素晴らしき武将~]という本を手に取り裏を見ると7800円とあった。ゆっくりと戻し、店を後にした。
店を出ると、等々雨がポツポツときた。
『ここで降ってくるか』
雨は降っているか降っていないかぐらいではあったが、天気予報を信じるなら午後から降ると、スカートの短い女が眉を寄せて喋っていたのを思い出す。
今日三度目のコンビニへ。
傘を真っ先に手に取り、コーヒー、サンドウイッチを買い駅へと直行。
駅に着くと、少し時間があったからベンチに座り、朝買ったスポーツ新聞を読みながらコーヒー、サンドウイッチで時間を潰した。
席を立ちトイレへと行き、駅のホームへ。
『あるじゃん、傘あるじゃん』
傘の取っ手をズボンのポケットに入れて、電車が来たから乗車した。
電車に揺られ、行き同様に睡魔に襲われ、船をこいでいた。
何とか駅に着き、改札を出ると雨は全く降っていなかった。
『傘要らなかったかな…』
バスに乗り、家路へと着くと、傘しか持っていなかった。
彼の髪は稲穂のように垂れ下がっていた。