手術の日の夜。
半分ミイラのようになって動きのとれないオイラはベッドに寝かされていた。
体からは腹部からの排出のためのドレーンや尿管カテーテルなどのパイプが延び、コード類はベッドの傍らに置かれたモニター機械に繋がれて血圧や心拍数などのデータを送っている。
両足には血栓を予防するための電動のエアマッサージ機が取り付けられてリズミカルに血行を促してるんだけど、少し足を動かすだけで手術の傷が痛むから動かすことが出来ない。
ちょっと気の利いたツタンカーメンそのもの。
右胸に違和感を感じた。
息をするときに何だか引っ掛かるような感じがあってうまく息が吸えない。
何だか変だと思って大きく息を吸ったとたん、激しい痛みに息が止まってしまった。
パニック![]()
体を起こそうとするけれど、少し力を入れただけで手術跡の傷が痛んで体を動かせない。
息ができないままで手探りでナースコールのボタンを探し押すことができた。
すぐに一人の看護師が入ってきて状況を確認する。
「どうしました?」
「胸が痛い。息ができない」
小さく息を吸わないと右肩と胸から背中全体が痺れるような激痛に襲われる。
「大丈夫。酸素は97だから体に必要な酸素は入ってます!」
うーん。そこじゃない気もするけど、
本当に97なのか?
小数点見落としてない?
実は9.7だったりしない?
SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)は90から100が正常ってことだからバリバリ正常値なんだけど、とてもそうは思えない。
ベッドの角度を変えたりさすってもらったり。
でも全く改善しない。
今夜の担当看護師も入って来た。
「痛みを感じないのを0、我慢できないのを10としたら幾つくらいの痛みですか?」
この入院中何度も聞いたフレーズだ。
「うーん。200くらい」
「あらぁ、10越えちゃいましたねぇ
」
だって息できないんだよ。
酸素飽和度は正常かもしれないけどさ。
その夜はベッドを少し起こした状態にして、強めの鎮痛剤を点滴してもらうことで落ち着いた。
しかしこの痛み、それから二日間にわたり体をベッドに伸ばすと起こすことがあり、その度にそのまま息が止まってしまうんじゃないかと思った。
体を起こせればおさまるんだけど、お腹に力が入れられないから手助けが無いと体を起こせない。
夜中にナースコールってのも嫌だから、座ったままで眠ったりした。
原因は不明。
手術後に継続的に投与していた硬膜外麻酔の関係とか手術中に腹腔内に入れるガスの影響で起きることがあるとも聞いたけど何だったんだろう?