君たちは幸せになれただろうか? | 脳内出血を越えたら癌だってよ

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生存目標 2023年6月1日

クリスマスの一番の思い出 ブログネタ:クリスマスの一番の思い出 参加中

今から30年以上前の、ちょっと切ない二人の話

その年のクリスマスの少し前に近所のキャラクターものを売ってる店を通りかかったら、中学校の時の友人の女の子が働いていた

しばらく世間話をしていると、彼女は店の大きなヌイグルミを指さして
「これが欲しいんだ」


軽い気持ちで
「クリスマスに買ってやるよ」
と言うと、
「クリスマスじゃ間に合わないかもしれない・・・」
なんていう不思議な返事

「なんで間に合わないの? 駆け落ちでもするの?」
彼女は笑いながら否定した
「まさか・・・」

それから数日後、彼女から手紙が届いた
何だろうと思って読んでみると

「あの時、どうして知ってるんだろうとビックリした」

え?
 マジで駆け落ちするつもりだったの?
   誰と?

たまたまあの時に「駆け落ち」なんて言葉が頭に浮かんできただけで、そんな事情が有るなんて思いもしなかった

読み進むうちに、おぼろげながら事情が分かって来た
簡単に言うと、好き合った相手がいるけど家族の理解が得られなくて別れさせられそうになっている。
だから、クリスマス前に二人でどこかに逃げてしまおうと思っている

その数日後、二通目の手紙が来た

駆け落ちする日時と方法

新幹線や飛行機を使うと駅や空港で捕まるかもしれないからフェリーで逃げると言うんだ
でも今考えると、運賃の安さが魅力的だったのかもしれないね

そして当日

夕方の出港に備えて、朝から開いている店を探して紙テープを何本か買い込んだ
何もしてあげられないけど、せめてテレビなんかで見るようにテープの両端を持ってサヨナラをしたかった

ところが、その日の予定が狂ってしまい、出港時刻までに港に行けなくなってしまった
車でも持っていれば何とかなりそうだけど、本数が限られているバスを乗り継いで行くには絶対的に時間が足りない

見送りを諦めて当時の溜まり場だった喫茶店に顔を出すと、バイクに乗ってきていた友人がいた

こいつに乗せてもらえれば、出港までに間に合うかもしれない!

そう考えて、ダメもとで頼み込んでみた
「頼む。何にも聞かないで、俺を港まで送ってくれ」

カウンターでコーヒーを飲んでた奴は、少しの間驚いてこっちを見ていたが
「わかった。何か知らないけど、お前がそんなこと言うんだから、大事な用事なんだろう。送ってやるから後ろに乗れ」

バイクはSUZUKI GS400 KATANAだったなぁ

400ccのバイクの後ろに乗るなんて、その時が初めてだった
「両手で俺につかまってろ!」

そう言うと、奴は夕暮れのラッシュが始まりかけた国道を猛スピードで飛ばしてくれた
右に左にと車を躱しながら追い越していくんだけど、しがみついてるだけで精いっぱい

足元で高速回転する後輪が怖いくらいだった

ガンガン走って、もう暮れかけた桟橋に着いたのは出港の30分くらい前だったかな
二人してフェリーの待合室に駆け込んだんだが、誰もいない
間に合わなかったか・・・
彼女たちはきっと乗船してしまったんだな

諦めかけたとき、待合室の奥から声をかけられた
その先には体に合わない黒の革ジャンを着た彼女とTシャツ一枚で隣に立つ若い男

「音がして誰か来たってわかったけど、知らない人が探しに来たのかと思った」
ここまで送ってくれた友人の姿を見て、見つかっては大変と奥に隠れたんだそうだ

それにしても、これから旅に出ようっていうのに、そんな恰好で?

「遠くに行くような服着てたらばれちゃうから、ちょっと近くに買い物に行くようなふりして出てきたんだ」
革ジャンの下は冬場には似つかわしくない薄着で、しかも足元はサンダルなのが寒々しい
「寒いだろうって彼が革ジャン着せてくれたの」
だから、彼氏の方はTシャツ一枚なのか・・・

出港まで少し時間が有ったので、4人でコーヒーを飲んだ
その間にも、部屋に入ってくる人の姿に隠れようとする様子が痛々しい


やがて乗船が締め切られ、俺たちは見送りデッキに、彼女たちは船のデッキへと別れた

他には見送りの人なんかいないデッキは海からの冷たい風に洗われている
俺は朝買った紙テープを取り出すと、二人に向けて思いっきり投げた



でも、投げ方を知らないから、本当は真ん中の芯の所を手に持って投げなきゃいけないのにテープをほどいて端っこをもって投げてしまった

海からの風にあおられて、紙テープは、船の遙か手前で岸壁に落ちた
本当だったら、綺麗に螺旋を描いて飛んでいくはずなんだよね

こんな時なのに、けっこう情けない

もう一本取り出して、前よりも思いっきり投げてみる
でも、また同じように勢いを失ったテープは船と岸壁の間に吸い込まれていく

「貸してみろ」
高校時代は野球部だった友人が、もう一本のテープをとって渾身の力で投げる
でも、そもそも投げ方が違ってるんだから、その強肩でも届かない

結局、何本も準備したテープは2本くらいだけ船まで届いた

出港の時刻になり、物悲しいホタルノヒカリなんて流れる中を船は岸壁を離れていき、やがてテープは千切れ、暗い海に飛んで行った

間もなく手を振る姿も見えなくなり、船は方向を変えて過ぎ去っていった

二人が見えなくなってから、友人が言った
「何も聞くなって言ったけど、一つだけ教えてくれ。 あれ、駆け落ちだろ?」
俺は無言で頷いた
最初の約束通り、そのあと何も聞こうともしない友を有りがたいと思った

クリスマスも終わり、年が明けてしばらくして差出人も住所もないハガキが届いた
消印は某大都市

「二人で住み込みで働いています。テレビも冷蔵庫も買いました」

それを最後に、二人からの連絡はなく、いつのまにか三十年以上の年月が経ってしまった
でも、クリスマスが来るたびに、彼らの事を思い出してしまう

Merry Christmas
君たちは幸せになれただろうか?



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