先ほどまで協力しようといった雰囲気が一転。
14人目は誰だとそれぞれが全体を見渡す。
アイドルたちの視線はやがて一人の人物に向けられた。

「み、みんなどうして私を見るのかね。」

視線は高木に向けられていた。
普段から破天荒なことをしてきた彼なら14人目の可能性も高いと感じたのだろう。

「そうよ。社長が14人目だったら当たり前すぎるわ。」

口を開いたのは律子だった。
彼女は自分が思っている意見を述べる。

「誰が14人目でもおかしくはないはずよ。もちろん私が14人目かもしれない。」
「律子、それはどういうこと?」

千早が律子に尋ねる。
いや、全員が律子に尋ねたかった。
律子の発言そのものが理解出来ないようだった。

「みんなもPDAを持っているでしょう?」

それぞれPDAを取り出す。確かに一人に一台のPDAが与えられているようだ。
つまり14台ちょうどあることになる。

「これがどうかしたの?」
「それぞれナンバーが見れるはずよ。ただ……」

千早の質問に律子が答える。
それぞれが自分に与えられている番号を確認する。

「番号を人に教えることはお勧めしないわ。」

律子が冷たく言い放つ。
それは何か知っているような発言であった。

「律子さん、あなた何か知っているのね。」

小鳥が律子に問いかける。
小鳥じゃなくても何人かは気づいているようだ。
律子は何かを知っていると。

「私が知っているのは勝利条件に番号を教えたらまずいことが書いてるんじゃないか。それだけよ。」
「勝利条件?」

小鳥が勝利条件を確認し始めた。
それにつられたかのようにアイドルたちも確認を始める。
反応に大きな差があった。ほっとするような表情、引きつった表情。
律子はこの瞬間を見逃していなかった。

「そういうわけで、私は一人で行動させてもらうわ。」
「律子さん、それはいくらなんでも危険じゃ……」

一人で行動すると宣言した律子。
小鳥はそれを制止する。
一部の人間は何が危険なのかさえわかってもいない。

「私も誰かと一緒にいるほうが危険だと思います。」
「ち、千早ちゃんまで。」

まだゲームは始まっていない。
それなのに協力という道がすでに閉ざされつつある。
このままゲームが始まれば、一人の行動となってしまう。
二人の個人行動宣言に誰もが無言になってしまった。
だが、無言の空間に一筋の光が放たれる。

「始まる前に協力し合う人たち集まりませんか?」
「ま、真ちゃん?」

真が協力者を募ったのだ。
少なからず全員が一人になるのを危険と考えたのもあるかもしれない。
ただ彼女は純粋に助け合いたい思いで発言した。

「何があるかわからないんです。一人でいるより安全に行きませんか?」
「わ、私は協力する。」
「雪歩……ありがとう。」

雪歩が真のそばに行く。
それを見た春香、亜美、真美、あずさの4人が真のそばに行く。

「これで6人だね。」

真が笑顔になる。他の5人も同様に笑顔を見せた。
6人つまりこのゲームのおよそ半数が力を合わせる形になったのだ。

「伊織ちゃん、私たちはどうしようか。」
「私たちは私たちで行動しましょう。あまり多すぎても何か起きたときばらばらになっちゃうわ。」

真とは別に伊織とやよいが二人で協力する体制を作っていた。
この段階で一人で行動するのは、律子、千早、美希、後堂、小鳥、高木の6人になった。

「美希は面倒だから一人で行動するの。」
「僕も一人で行動します。男である以上警戒されるでしょうから……」
「うむ、後堂君がそういうのであれば私も一人で行動しよう。」
「え?え?後堂さんも社長も私と行動してくれないんですか?」

こんな状況でもマイペースな美希。
後堂と高木も行動を共にすることを避けた。
そして、取り残された小鳥も必然的に一人となってしまった。

「さあ、どうなるんでしょうね。」

律子が不意に笑った。
この状況でおかしくなってしまったのか。

「律子さん、いきなりどうしたんですか?」
「春香、この中に14人目がいることは間違いないのよ?」
「それがどうかしたんですか?」
「一人で行動してるのかしら、それともあなた方の中に混じっているのかしら。」

もちろん14人目は存在しているのだ。
協力体制の中に混じっていても不思議ではない。

「信じよう。僕たちは大丈夫だって。」

真が集まってくれた5人に励ましの言葉をかける。
心なしか不安だった5人もそう強く信じる。

「そろそろ、ゲーム開始の時刻ね。」

千早が時間を確認した。
緊張した空気がさらに重くなる。

ついに天国か地獄と化するゲームが開始するのであった。



続く