「プロデューサーさん。」
「お、春香どうしたんだ。」
「お菓子作ってきたんで食べませんか?」

ふむ、ちょうど仕事もきりがいいし休憩するか。

「わかった。少し片付けたら行くよ。」
「いつものところで待ってますね。」

鼻歌を歌いながら春香はいつもの休憩室に行った。
俺は仕事の資料をきちんと整理して片付ける。

「小鳥さん、休憩行ってきますね。」

返事がない、いつもの世界へ旅立っているようだ。
まあ、いいか。あまり待たせたくないし行こう。

「春香、待たせたな。」
「そんなことないですよ。プロデューサーさんは何飲みますか?」
「たまには紅茶にしようかな。」
「今入れてきますね。」

こうやって女の子と一緒にティータイムなんて洒落た時間を過ごせるのはここのいいところだな。
そういえば、今日はどんなお菓子作ってきたのか楽しみだ。

「プロデューサーさん、ティーパックどこにあるか知りませんか?」
「ん?何探してるって?」
「ですから、ティーパックどこにあるか……」
「その前に春香、一旦ここに座ってくれ。」

イスをひいて座らせる。春香は頭にはてなを浮かべているが大人しく座った。
大人気ないがこれは我慢できない。

「春香、あのな。ティーパックじゃなくてティーバッグだ。」
「え?え?」
「確かに今ならティーパックでも通じる。だが、俺は正しい言葉を覚えてもらいたいんだ。」

みんなよく勘違いしているが、正しくはパックではなくバッグなのだ。
そんな細かいことをと思われてもいい。
俺は俺より若い世代の子に出来るだけ正しく言葉を覚えてもらいたいのだ。
そして何より、細かいことに気をつけることはアイドル活動の中でも役に立つはずだ。
どんなに細かい部分でも妥協しないでやりぬく、そんな力が身につくと信じている。

「ご、ごめんなさい。プロデューサーさん。」
「わかってくれて嬉しいよ。さあ、一緒に探しに行こうじゃないか。」
「は、はい!」

少ししょんぼりしていたが、すぐに元気いっぱいの笑顔を見せてくれた。
二人で給湯室を探したが見つからないのでどうやら切らしているようだ。

「ないみたいだな。」
「買いに行きますか?」
「たまには小鳥さんに頑張らせて長めに休憩取るか。」

というわけで、二人で切らしていたものを買出しに出発。
買い物中もやたらご機嫌な春香。
そんなにいいことでもあったのだろうか。
会計を済ませ事務所に戻るときに、千早に会う。

「おや、千早じゃないか。」
「春香にプロデューサー?二人でどうしたんです?」
「あのね千早ちゃん……」

春香がここまでの経緯を話す。
途中千早がこっちを呆れ顔で見てきたのが気になるところではあるが。
そのあとは3人で事務所に戻り、春香が作ってきたお菓子と買ってきた紅茶でティータイムを楽しんだ。
うん、春香の作ってきたお菓子はおいしいな。

「春香、また今度お菓子作ってきてくれな。」
「もちろんです。」

満面の笑みで返事をしてくれた。
このやりとりを千早がただじーっと見つめているのであった。





-そのころの小鳥-

「こんなことになるなら、真面目に仕事しておけばよかった……」

3人のティータイムを羨ましそうにしながらも、たまった自分の仕事を片付ける小鳥であった……