昨日最も大切なミッションはこいつを取りに行くことだった。
こいつはその日なくてはならないものだったらしいが、いったい何に使うものなのだろう…
俺はただ言われた場所に車を走らせエレベーターを上がって指定された場所の扉を開けた。するとポツンとこいつは置いてあった。色は青い。くぼみがある。素材はウレタンだろうか。片手でこいつを持ち上げて元いた場所へ戻ると依頼してきた男を呼び出した。
豪華そうなホテルで待つように言われた俺はこいつを持ってしばらく佇んでいた。
廊下の角から依頼してきた男が駆け寄ってきた。Tシャツにジーンズというラフなスタイルで高級そうなホテルには似合わない風貌だったが、男は急いでいるようだった。すると…
「大ちゃんありがとう」男はそう言ってその場を去った。
仕方がないのでしばらく時間を潰していると人だかりが出来ていたので覗いてみた。すると花びらを渡されてここに立っているようにとやたら天気の良い日に吹き抜けで景色の良い場所に案内された。先ほどの人だかりは彼らだったようだ。
風が強かった。持たされた花びらを握りつぶさないように優しく持っていた。
すると奥の扉が開き依頼してきた男が歩いてきた。男は先ほどとは違いタキシードに蝶ネクタイをし、かなりオシャレに決まっていた。だらしない感じだった男とは別人のようだった。男の隣には美しい女性が一緒に歩いてきた。その女性は美しいドレスを身にまとい、キラキラと輝いて見えた。なんと二人は腕を組んで歩いている。周囲の人だかりが美しい二人に向かって花びらを投げていた。強かった風は収まり、花びらのシャワーの中を美しい二人が歩く。その先のベンチにはにはなんと、先ほど依頼されて運んだ例のこいつが置かれていた。よく見ると男の腕には赤子が抱かれていた。赤子は朗らかで温もりのある表情をしていた。王家の祝い事だろうか、タキシードの男が王、ドレスの女性が王妃、赤子はきっと王女なのだろう。
気がつけば俺は手に持った花びらを天に向けて投げていた。美しく舞う花びらの中を3人は歩き、例のこいつに王女を座らせた。俺が運んだものは王女の椅子だったらしい。
本当は1年前にしていたはずだったけど、色んなものを乗り越えて昨日する事が出来たな。本当に良かった。
王女の椅子を運ぶ事が出来て光栄だった。
兄貴はこんなことでも依頼されると嬉しいんだ。
依頼人は俺のたった一人の弟。
鉄ちゃん結婚おめでとう。

