昨日の続きになるが、フェルリングのオーボエのための48のエチュード。

以前主流だったパリのBillaudot版を持ってはいたが(紛失)、新しく全音から改訂版が発売されていたので、購入した。

マルセル・ミュールが校訂したサクソフォン版よりも、かなりシンプルだ。

サクソフォン版は、ここぞとばかりにフォルテやピアノ、クレッシェンドやデクレッシェンドが書き込まれ、それを実現するだけでもかなりのテクニックを要する。

対してオーボエ版は、冒頭にフォルテが一つ書き込まれ、あとはそのまま何もないまま終止線を迎えたりする。

これを音楽的に充実させようと思うと、楽譜とゆっくりと向き合う時間が必要だ。

並んだ音符から、生まれ出る音楽をイマジネーションするのだ。

音楽がイメージできたら、それが実現できるまで練習をすることになる。

非常に音楽的な時間に感じる。

サクソフォン版は、あまりイマジネーションを膨らませる時間を与えられず、その楽譜を楽譜通り吹くことをまず要求されているように感じてしまう。

さぁ、これを使ってどんな料理が出来るだろうかという素材を目の前にし、よく見るとここは油多め、焼きすぎず、でもこの部分は冷製で、甘めのとこ敢えて塩かけて甘いの強調させて、など注文が多いのだ。

加えてミュールが指定したテンポは極端に速かったり、遅かったりする。

当時のパリ音楽院での教育の事情が多々あったことは推察されるが、どうか若きサクソフォン奏者たちは、このオーボエ版を手にして、ゆっくりとフェルリングの音符と向き合う時間を作ってもらいたい。

僕も今更ながら、これからそうしてみようと思っている。

フェルリング 48のエチュードの楽譜