分娩室に入ってから、2時間ほど経った。
お昼を迎えた。
主治医が現れ、また内診。
まだ子宮口がそんなに開いてない様子。
奥をグリグリされて痛かった。
膣錠を入れてから3時間経ったので、
追加でまた入れる事になった。
入れた後から本格的に陣痛が始まった。
身体をよじるほど痛かった。
それでも子宮口がそれほど開いておらず、
ひたすら痛みと闘っていた。
たまたま通りがかった助産師さんに
「イタイデスゥ…」
と訴え、
腰に湯たんぽをしてもらい、
ラベンダーのアロマまでしていただいた。
腰があたたまると一時的に楽になった。
中期中絶の記録を読むと、
ほとんどの方が夕方までに出産されていたので、
私もひとまず夕方を目標にしていた。
分娩室までお昼をご飯を持ってきてくれたけど、
痛みで吐気があったので食べるのをやめた。
しばらくして猛烈な痛みと、陣痛が消えた時の猛烈な睡魔に襲われ、気を失いそうな感覚に陥った。
お腹の子との別れは本当に寂しいけど、
もう破水してしまったし、
この子も下がってきてはくれているそうなので、
もう腹を括って産むしかないと、、、、
今更だけどやっと本当にここで諦めがついた。
陣痛は声が出るほどの痛みに変わり、ひたすらに激痛が続く。
破水した時は体勢を変えたタイミングだったので、
身体を動かした方がいいのかと思って
右横→仰向け→左横を繰り返していた。
というか痛すぎてジッとしていられなかったのもある。
子宮口を何かに押されるような感覚になったので、
いよいよナースコールをした。
助産師さんがくる前に、
ズルっと膣に硬いものが入ってくる感覚があった。
すぐにこれが赤ちゃんの頭だと察した。
あんなに小さい身体なのに、
こんなに硬い頭蓋骨なのか…
となんだか感動しつつ悲しくて、
よく分からない涙が沢山出てきた。
到着した助産師さんの
「出産です!」
の言葉で、3人の助産師さんと運良く主治医がすぐに来てくださった。この時点で陣痛はほとんど消えていたが、
そのままいきんで!
と言われて、
うっ、といきむと、
するっと出てきてくれた。
もちろん産声はなく、本当に、静かなお産だった。
そばで助産師さんが
「赤ちゃん出てきてくれましたよ」
と優しい声で教えてくれた。
「キレイに出てきてくれました。
ほっぺがぷにぷにで可愛いですよ!
100点満点のお産でした。
お疲れさま!」
この言葉にホッとした。
せめて無事に産んであげたかったから。
赤ちゃんはそのまま身体を洗ってもらい、
体重と身長を測っていただくことに。
赤ちゃんは出たけど、胎盤がまだ出てきておらず、
まだお腹の下腹部がぽこっと出ていた。
助産師さんは外から、主治医が中からそれぞれグリグリと押して、ほぐそうとしていたが、出てこず。
結構痛かったけど、とりあえず放心状態なので、もう好きにしてくれって感じ。
胎盤はなかなか出てこない様子なので、自然排出させるためにそのまま様子を見る事になった。
あっという間のお産に、全身の力が抜けた。
夫が分娩室に入ることを許可され、緊張した顔で入ってきた。
「赤ちゃん、いなくなってしまったよ」
「お疲れさま」
と言って頭をなでてくれた。
自分のお腹に触るのが怖かったけど、
意を決して触ってみたら、やはりペタンコのお腹になっていた。
胎盤はまだ硬く、くっ付いているのが分かった。
初期からお腹がここだけ盛り上がっていたのが気になっていたけど、ここから赤ちゃんに栄養を送ってくれていたのかーと感慨深かった。
胎盤は2時間後にポコっと出てきてくれた。
あんなに硬いもんなんだな。
こうして初めての出産が終わった。
仲良くしていただいている先輩に妊娠を報告した時に
「ウメ子の幸せなお産を願っているよ!」
と言ってもらった言葉を、陣痛中に思い出していた。
どうしても欲しくて待ちに待った子どもを中絶することになるなんて、全く想像しなかった。
陣痛は、ただの拷問だった。
でもこれが不幸なお産だったかというと、
今は不思議とそこまでの不幸は感じていない。
息子がうちに来てくれた事が本当に嬉しいから。
なぜあっさりとこんな気持ちになれるのか、自分でもよくわからない。後々反動が来そうな気もして、ちょっと怖い。
今はただ、息子を外に出してあげる事ができたこと、会えた事が嬉しい。
だからこんな状況でも友達に「おめでとう」「お誕生日おめでとう」と言われて、素直に嬉しかった。
とりあえず記録しておく。