イエスを陥れようとする人たちが「皇帝に税を払うのはユダヤの律法に適っているのか」と問うのに対し、「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい」とイエスが答えられた話。(マタイ22,15‐22)これはなかなか音楽作品の題材になり難く、ヴァイマル時代の室内楽的カンタータ「各々に各々のものを」BWV163は、神に与えられたものを磨けと云う奨めに、「幸いなるかな、おのが御神に」BWV139は、神への信頼を、ブランデンブルク協奏曲第1番の冒頭を使ったソプラノのソロカンタータ「偽りの世よ、われは汝に頼まじ」BWV52は偽りの世と真実なる神との対比、と云った具合に意味を転化させつつ台本化、音楽化されている。