福音書のテーマは、イエスが亡くなった若者を蘇らせた話(ルカ7,11‐17)で、自ずと死の想念に焦点を当てたカンタータが大半である。
「来たれ、汝甘き死の時よ」BWV161はヴァイマル時代のもので、2本のリコーダーが彼岸的な響きを醸し出し、マタイ受難曲で有名なコラール旋律が全体の要となっている。
「キリストこそわが生命」BWV95は、死をテーマとしたコラール4曲を編曲したもので、全体的な雰囲気は牧歌的である。死の克服を意味するものであろうか。
「いと尊き御神よ、いつわれは死なん」BWV8は、死の時を刻む、または弔いの鐘の表現が特徴的である。
「たれぞ知らん、わが終りの近づけるを」BWV27は、最初こそ受難曲の埋葬の場面を想起させるようなハ短調曲であるが、その後は天国に安らうような感情が支配的である。死からの蘇りを永生として捉えているのであろう。