このテーマ「RECOMEND BOOKS」では、僕が実際に読んだ中で「コレは!!」というオススメや、
気づきに富んだ内容の厳選された本を紹介していくつもりです。
よく、シンクロニシィティ、とか偶然の一致、なんていう言い方をしますが、
「最近気になっていたことについてのことが、偶然に手に取った本にかいてあった」
「本に書かれていた主人公の心情やできごと、これが今の自分と驚くほどにカブっていた」
――そんな経験は、読書好きの方なら何度も経験があるはずです。
実際、ぼくにも何度もそういった不思議な経験があります。
学生時代の話になるのですが、大江健三郎の「洪水は我が魂に及び」という本を、
ある人の話の中に出ていたことがずっと頭に残っていて、あるとき手にとりました。
かなり以前の作品で「野間文芸賞」を受賞した作品です。
その内容はというと、主人公が「自由航海団」という組織に出会い、やがて行動をともにするようになります。
その「自由航海団」は、やがて訪れる“東京崩壊”にそなえ、核避難所跡をその本拠地とし、
たてこもります。しかしやがてリンチ、殺人、強姦・・・といった組織の行為が露呈していき、
反社会的組織とみなされて最後は機動隊に包囲さえていく――という話。
そして僕がその本を読み終えたあと、しばらくたってからあのオウム真理教の事件が起きました。
あともうひとつエピソードを。
村上春樹のエッセイ「村上春樹堂はいかにして鍛えられたか」を読んだときのこと。
この中で、彼自身が育った地域の教育システムについての批判らしき文章がありました。
その地域とは兵庫県の神戸市近郊であり、中学時代のそこでの教師の体罰について、
いまでも苦い思い出として残っている・・・と書かれていました。
そして、その本が刊行された1997年。あの忌まわしい容疑者「酒鬼薔薇聖斗」による、
児童連続殺傷事件が起こります。
そう、神戸を舞台にした連続児童殺傷事件です。
本の刊行されたのは1997年の6月。そして事件は2月に起こっているのですが、
このエッセイ集は週刊朝日誌上での連載をもとにまとめられたものなので、
執筆されたのは事件よりももちろん以前。つまり、村上春樹はエッセイ内で事件の深層を示唆
するような文章を前もって書いていたことになります。
――と、どちらもちょっと怖めの事件に関するシンクロニシシティのお話になってしまいましたが、
そこまでではなくとも、本屋に行ってなんか引っかかる、人の話の中で心に残っている、
そういった本を購入すると、思いがけずにそういったセレンディピティを得ることができます。
そういう経験は本当によくあります。
(なぜか続くときにはこういうことは連続しておこるものですが)
そして、もうひとつ最近あったエピソードを。
僕はなぜか学生時代、60年代-70年代起こった学園紛争、学生運動について書かれた本が
結構好きでした。もちろん僕自身は本当にちゃらちゃらした大学生活を送っていたため、
そういったポリシーも思想も皆無です。でも、なぜか興味があったんですね。
自己分析をするに、父がいなかったためにその世代(自分の親の世代)の話には興味があり、
どこかそこに自分の中での父性、父権といったものを探していたのかもしれません。
そして、ブログにも書きましたが最近実の父との交流が復活し、
あるときに親父と一緒に食事をしながら、おたがいの昔話をしていたときに、あらぬことから
日大の歯学部生だった父が、当時の学生運動に関わっていたことを知ることになるのです。
そのときの心境は・・・驚いたというよりも納得でした。
そして思いました。20年以上も一切会話もなく、とくに彼のことを僕は父と思えたことは
いままでありませんでした。
しかし、その話を聞いて、やはり僕はこの人の血を受け継いでいるのだ、と思いました。
学生時代、読んだ本の中に僕はまだ見ぬ父の姿を求め、
そして本当の父の姿がそこにはあったのです。
よく「歴史小説が好きな人」は前世が武士だったとか、「ヨーロッパ旅行が好きな人」は
前世でヨーロッパに住んでいたとか言ったりしますが、前世の記憶とかいうあいまいなものじゃなく、
実際に自分が引いている血筋、遺伝子といってもいいかもしれません――が、いまの自分の
趣味・嗜好に多大なる影響を及ぼしていることは間違いないですものね。
最近読んだ本の中でのオススメは楡周平「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京」。
東大安田講堂事件から現代へと続く、まさに「華麗なるの血」のエンターテイメント巨編。
イッキに読んじゃいました。最高です!