病気になってよかったことのひとつに、父との再会があります。
それは20年ぶりの邂逅でした。
僕が物心ついたときにはすでに親父とオフクロは離婚していたため、
僕の記憶にある父は本当の血の繋がった父ではなく、母の再婚相手でした。
はじめの記憶で本当の父に会ったのは・・・いったいいつだろう?
思い出せないのですが、「ママの友人の歯医者の先生」と幼かったころの僕に母は説明し、
一緒に食事をしたような曖昧な記憶があります。
その「ママの友人の歯医者の先生」が本当の父であることを知らされたのは、
中学生になる直前だったと思います・・・。
病気が発覚した直後。
見知らぬ番号から朝に電話がありました。
「誰だろう?」
そう思って電話に出ると「Hと申しますが・・・K君ですか?」と。
「・・・はい」
「・・・お母さんのお友達のHです。覚えていますか?」
それが僕と親父の、20年,ぶりに交わした会話でした。
それがキッカケで、いまでは1~2ヶ月に一度は僕の家のほうを親父が訪ねてくれ、
何度も食事をし、はじめはぎこちなかった会話も徐々に解けていくようになりました。
それは、僕の心の中の35年間にわたるずっと探していたけど
見つからない、わからない、大切な大切な心の欠片でした。
生まれてはじめての父子の会話でした。
もしも病気になっていなかったら――
この再会はなかったでしょう。
病気に感謝です。
そして、再会してはじめてわかったことですが、
父方のご先祖様を祀っているお墓は、今の僕の家から程近い霊園でした。
僕がここ鎌倉に引っ越してきたのは、いまから5年前・・・。
引き合わせてくださったご先祖様に本当に感謝しています。
本日の由比ガ浜は快晴です