ベビーサイン協会代表理事&
ベビーサイン®の専門家
吉中みちるです。
こんにちは!
今回は社会人大学院生として研究に取り組んでいた私が、修士論文の中から「ベビーサインが保護者に与える影響」について、わかりやすくお話しします。
まだ言葉を話せない赤ちゃんと、手話やジェスチャーを使ってコミュニケーションをとる「ベビーサイン」育児。
多くのパパやママが、赤ちゃんの気持ちが分かって育児が楽になることを期待して始めるでしょう。
しかし、私が実施したアンケート調査と自由記述の分析から見えてきたのは、ベビーサインが赤ちゃんとの関係だけでなく、親自身、そして家族全体にまで、想像以上のポジティブな変化をもたらしているということでした。
この記事では、まずその変化の第一歩となる「赤ちゃんの理解」について、具体的な保護者の声とともにご紹介します。
記事の目次
1. 研究の概要:430名の保護者の声から見えたこと
私が2018年から2020年にかけて行なった研究では、ベビーサイン育児を経験した保護者430名を対象にアンケート調査を実施しました。特に、自由記述欄にコメントを寄せてくださった182名分のデータを、文化人類学者の川喜田二郎氏が考案したKJ法(※)という手法で分析しました。
(※KJ法:断片的な情報(自由記述コメントなど)をカードに書き出し、類似性や関連性でグループ化し、図解や文章でまとめることで、問題の本質や新たな発想を見つけ出す手法。担当教授と仲間の学生のヘルプを借りて、膨大な紙切れを、あーでもない、こーでもないと分類した時間が懐かしい・・・)
その結果、ベビーサインがもたらす変化は多岐にわたることが判明したのですが、本日はその中でも最も重要な変化の入り口である「赤ちゃんの理解」について深掘りしていきます。
保護者の皆さんは、ベビーサインを通して「子どもの視点」や「子どもの気持ち」をより深く理解し、共感できるようになったと実感しています。
保護者のリアルボイス(抜粋)
・こちらの自己判断で子どもを見てしまうのではなく、ベビーサインを通して子どもの気持ちに寄り添えたことが何よりの収穫でした。
・ベビーサインなしの育児は子どもへの観察眼や共感力の面でもあり得ないと実感しました。
・サインがあることで子どもの視点を理解してあげられ、子どもの思いを感じ取ることができ、共感できたことがとても良かったです。
言葉を話さない時期でも、赤ちゃんには豊かで複雑な「思い」や「伝えたいこと」がある、という事実に驚き、そして感動しているのが分かりました。
保護者のリアルボイス(抜粋)
・赤ちゃんもこんなにたくさん伝えたいことがあるのだと気づかされました。
・1歳そこそこの赤ちゃんがこんなにも色々伝えたいことがあったんだと驚いています。
↓実は昨日も、対面のイベント会場で、川崎で活動しているベビーサイン講師「アンディー先生」の生徒さんが、直接私に手紙を渡してくださったんです。ベビーサインへの思いをこんな風に届けてくださる方に支えられて、ベビーサイン協会は20年も活動を続けてこれたんだな~と改めて感じることができました。
ありがとうございました。
生徒さんから頂いた手紙
ベビーサインを使おうと意識することで、親が「受け身」ではなく「能動的」に赤ちゃんを観察する習慣が身についていることがわかりました。
保護者のリアルボイス(抜粋)
・子供がぐずったときに一呼吸してどうしたいのかとじっくり観察できるようになりました。
・ベビーサインをとおして、子供が何を訴えているのかいろいろ考えたり、子供の表情、手の動き、表現を興味深く観察できて良かったです。
・ベビーサインの良さは「赤ちゃんをよく観察するようになる」ことだと思います。
いかがでしたか?
ベビーサインを育児に取り入れることは、まず、わが子を「ただ泣いたりぐずったりして欲求を伝えてくるだけの存在」から、「自分なりの思いや気持ちを持つ、一人の小さな人」として、より深く理解し共感できるようになる、ここがスタートなのです。
そして同時に、「親の考えを押し付けるのではなく、赤ちゃんの視点から世界を見ること」が育児においていかに大切か、という本質的な気づきにつながっていくのです。
この「赤ちゃんの理解」が深まることで、実は日々の育児にも大きな影響が現れます。それはまた次回の記事で詳しくお話ししますね!お楽しみに。