ジム・モリソン 世界が焼け落ちる日に・・・ | BABYDOLL LOUNGE

ジム・モリソン 世界が焼け落ちる日に・・・

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さて、今日もJのアーティストを取り上げます。
映画ドアーズ「まぼろしの世界」
この作品は映画館でも見て既に記事にしていますが
この前の休みの日にAMAZONから
DVDが届いて再度鑑賞しましたので感想ついでに
ジム・モリソンについて書いてみたいと思います。

まだ瑞々しい感性だったといえる?十代の頃
友人がランボーやボードレールなんかの詩集を
奨めてくれたことがあった。
仏の詩人だなんて何だか高尚なものだと思いつつ、
手にとってはみたが、平面の中の文字を粘り強く眺めていても、
わたしの感性が低すぎるのか、
詩人たちの言葉は空中をあてどなく漂い、あらぬ方向に流れていき、
捕まえようとしても手の中をすり抜けていくのだった。
だが同時期に一緒に借りたドアーズのレコードを聴いたときは違った。
歌詞カードを追いながら彼らの音楽を聴いていると
平面の紙の上から剥離した文字が空中に立ち昇り、
わたしの存在の中にすっと入り込んできた。
ジム・モリソンが歌いだすと、
言葉は魔力を持ち、生なましく官能的でさえあった。
彼の才能なのか、ビート以降のわたしの感性に合致したものなのか
判断はしないが、古の詩人よりも、彼の言葉に一瞬でも
囚われの身となったのは事実であった。

「すべては滅びても、詩と歌は残る・・・」

エルビスのカリスマ性にヨーロッパ詩人の知性を身に付けたような
彼の存在は、花と平和の共同幻想を謳歌する当時の
若者文化の渦中にあって、そうした風潮とは全く異質なものだ。
不可知で不可解な人生と呼ばれる不条理劇を歌った
ジムモリソンの世界観は、ノスタルジアを拒否し、現在でも
ある種の説得力を備えた普遍性を持っていると思うのだ。



だが、誰も近づけないような魂の深遠でダンスする男も
自分自身の知性と悟性に苦しめられ、過剰な負のエネルギーを
歪んで見える現実に吐き出すしかなかったのであろうか。
酒とドラッグに溺れていく孤独な酔漢モンスターは
バンドの均衡すら危うくすることもあったが、
ドアーズのメンバーはそんな彼を音で支え、助け、
立ち上がらせ、決して見捨てなかったのは感動的だ。
保守連中の台頭によりヒッピームーブメントは
希望を失い、彼と同時期に活動していた
ロックスターたちは時代の終わりを象徴するかのように
次々と死んでいった。

「おまえらは奴隷だ!いつまでこき使われているんだ!」
観客にぶちまけた痛烈な言葉はある意味真実であって
実際、奴隷だと罵倒された観客の多くはジムを非難する側に回った。
アメリカが再び暴力を正当化しはじめたときに
ジムの中の音楽は終わりを告げ、一人の人間として
本来の自分に立ち戻るため、
詩の世界に没頭する方向へ歩みだしたのかもしれない。

「酒を飲むのはバカと話をするためだ」

バカとはいったい何を、誰のことを差しているのだろうか?
彼にスリルを求めていながら実際に過激な行為に及ぶと
身を翻して非難する表面しか見ない連中のことか?
それとも危険な存在のジムに圧力をかけて
抹殺しようとする体制側の連中のことか?
もしかしたら酒やドラッグの力を借りても
コントロールできなかった本来の自分自身のことだったのだろうか?



反逆の道ともいえるハイウェイを車で飛ばす生前のジムの姿
が世界の終わりへ向かって疾走する姿にも見えてくる。
途中、道端で轢かれ今にも死に絶えそうなコヨーテに
毛布を被せるシーンが非常に印象的だった。

このDVDには特典映像として
ジム・モリソンの父と妹のインタビューが収録されていた。
父は海軍の司令官でまさに国家権力の中心にいるような人だ。
ジムは自分が有名になれば家族に迷惑がかかると思ったのか
デビューするときに家族との「つながり」を自ららの手で断ち切った。
ドアーズのファーストアルバムのクレジットには
家族=DEADと書いてある。
父は2008年に他界したそうだが、生涯一度もドアーズの
アルバムを聴かなかったようだ。
当初息子の才能を疑っていた父は世界中で息子が支持されている
ことを誇りに思うと語った。
しかし彼にはドアーズの価値観など理解しがたいものだったと想像する。
父の口からはドアーズ以前の頭のいい素直な子だったジムの思い出が語られる。
自分とは真逆の道へ突き進んだ息子の世界観を理解することなく
ただ父が子を想う姿がそこにあった。
妹はもう少し近い距離で兄を見ている。
ドアーズのジム・モリソンとしての才能への理解も示し
誇りを持って語っているのが見受けられる。
非常に興味深いインタビューだったが見ていて切ない気分に
なった。

「世界が焼け落ちる日には酒を飲んでいたいな」

映画の中のジム・モリソンのことを考えていたら
どうも部屋が煙臭い。
灰皿の上で煙草の吸殻が燃えてやがんの・・・
すぐに気がついたから良かったものの
「家が焼け落ちる日が来たら泣きますよ、わたしゃ」
などと、我に返り、朝食を食べているわたしは
ジムさんのカリスマ性に憧れど
魂の浅瀬でチャプチャプやっている程度が
丁度いいのかもしんない・・・・
では、また!(笑)