秋の絵本なにかないかなーと思っていたら、なんだかそそられるタイトルの絵本を見つけました
なにげに作者が気に入っている作家の1人『大島妙子』さんだし
これは期待です
10月のある日、『ぼく』の家の柿の木に大きな大きな『イガグリ』がなっていた。
そんなバカな。とりあえず収穫。今夜は栗がたっぷり栗ごはん。
と思ったけれど、このいがぐり、どうしても割れない。
ためしに『ぼく』が、『ひらけー、くり』って言ったら……
静かに静かにあいて、なかにいたのは……
見たこともない変なやつ
『いがぐりにそっくりだから、こいつはいがぐり星人だ』
『いがぐりから生まれたグリたろう!だね』
って、お父さんと『ぼく』がおおはしゃぎ。
お父さんは電気屋さんだから、壊れたいがぐり型の宇宙船をなおしてみてくれるんだって。
そうしてグリたろうは、僕たち家族と仲良くなった。
どんどん家族の大事な一員になっていった。
お父さんは、宇宙船を直すのをやめちゃったみたい。
でもそれでいい。グリたろうは、ずっとこのうちにいればいいんだから。
だけれど11月のある日……
おばあちゃんが買ってきた焼甘栗を見て、グリたろうは泣き出した。
このかんじ。小さい頃あったような。
父が山で捨てられたウサギを拾ってきたときとか、近所の人に呼び出されていったと思ったら、迷い犬をつれて帰ってきたときとか。
もうウチには犬がいるから、『新しい飼い主が見つかるまで』『本当の飼い主が見つかるまで』限定の家族。
でも生活していたら、そのうち『ずっとウチにいればいいよ』って気分になる。
『ぼく』のお父さんが宇宙船を直すのをやめちゃったみたいに。
『ぼく』がずっとこのうちにいればいいんだからって思ったみたいに。
だけれど、グリたろうが甘栗を見て泣き出したのを見て、やっぱり本当の家族のところに帰りたいのかなって思ったり。
でもでもやっぱり行って欲しくない。
そんな『ぼく』の心の葛藤がとても切ないです。
ヒゲの濃いおっさんみたいなグリたろうは『グリグリ』しか言わないのだけれど、
作者の大島さんが描く、グリたろうと家族の交流がほんとうに愛しく描かれていて
わかっているはずの結末には、きっと『ぼく』たち家族とおなじキモチになるんじゃないかなと思います。
秋にぴったりのチョットせつないお話です。