「女将は大変だったのか?」
グリンダが尋ねると、レイは苦笑いをした。
「まあ‥…それなりに。」
「そうか。ご苦労であった。」
何となく手こずるレイが想像出来て、顔がニヤけてしまう。
笑っているのを悟られぬようにグリンダは歩を速めた。
村長の家の前には馬車が停められていて、立派な家と大きな馬車を見て一目で〈そこだ〉と解った。
「来客中ですかね?」
長身のレイが玄関脇の小窓を覗き込む。
「さぁな、我の知るところではない。」
全くお構いなしにグリンダはドアを開け、中に向かって声をかけた。
「どなたかいらっしゃいますか?村長様にお目通り願いたく、お伺いいたしました。〈光の国の役人〉にございます。」
〈グリンダ様っっっっっっっ!〉
レイは腰が抜けてしまいそうだった。
度胸があるのは重々承知してはいるが、あまりにも不躾な行動に度肝を抜かれた。
しかも、宿屋に泊まる時についた嘘八百の〈光の国の役人〉を名乗っている。
道すがら、お互いに聞いた話を伝え合いながら来たので目的は判っていたが、グリンダの真意が見えずにハラハラとするばかりだった。