カイルはすぐにでも旅立とうと決めて、エアリスに服や装備の在処を尋ねた。
だが、医師に止められてしまった。
「女王様の真意は私には計りかねるが‥…」
来た時と同じように手をかざして身体を調べて続けた。
「せめて明日まで治療をしよう。命の火の輝きは十分だが、腹の傷は内臓に達していたのだからね。」
黙って頷くと出て行く医師を見送って、カイルはベッドの端に腰掛けた。そして大事な事を思い出した。
「あの‥…エアリス?」
「なあにー?」
ベッドサイドのテーブルに座ってカイルの様子を見ていたエアリスは名前を呼ばれて返事をした。
「どうしたの?何か必要なモノがある?」
「いや、さっき医師様が言ってた僕を助けた姫様って何処にいるんだい?」
早々に立ち去らなければならない。だが、せめて命の恩人に一言礼を言いたいとカイルは思ったのだ。
何故か元気に話していたエアリスの顔が曇った。
「それは‥…」
姫の居場所を聞いた事で不信感を抱かれたのかと慌てた。
「ち、違うよ!他意はない!ただ、一言礼を言いたかったんだ。助けてくれた事に。僕は早く旅立たないとならないらしいから、せめてお礼を言ってからと思ったんだ‥…」
エアリスはニコリと笑うとカイルを手招いた。
「こっち来てー」
部屋のテラスへと通じる窓を開けて外へと出て行く。
「聞こえるー?」
片手を耳に当てて耳を澄ますように合図をしている。
「姫様‥…ルゥルゥが歌ってるのー。あそこにいるの。あの塔の一番上‥…」
指差された先に見えるのは高い塔。その一番上にある窓から光が漏れていて、息を殺して耳を澄ますと微かに歌声が聞こえて来た。
「あそこがルルーシュ様の部屋なのかい?」
城から随分と離れた場所にあるのが不思議で何気なく尋ねると、エアリスはポロポロと泣きだした。