オレは一人で舞い上がっていた・・・
エヴァ初号機が暴走して、誰にも止められない様な状態だ
自分で言うのも何だが、カラオケは上手い方の部類である
いつものように歌うが、音程もハズレ、いつもとは違う乗りだ
イケイケの乗りあでった
このときこそ最大にアドレナリンが分泌されていたに違いない
美穂は自分の十八番である、高橋洋子の「残酷な天使のテーゼ」を歌い始めた
カラオケで、いつも美穂が歌っている曲だ
時々杏奈を見るが、彼女はじっとしている
「歌わないの?」と杏奈を突っつくが無反応である
「友達は来たの?」と美穂に聞いた
「来たよ、彼氏と一緒だったから、すぐに帰ったよ」と美穂
オレは酔ってはいたが、頭の別の部分では冷静だった
美穂の行動はいまいち理解できない部分はあったものの
これまでの行動パターンだとカラオケに来ることはまず無かったはずだ
オレは勝手にだが、こう理解した
オレが杏奈と大阪でも会っていることは美穂は知っていた
美穂にとってオレという存在がどうであれ
オレが美穂にゾッコンだと思っている
そのオレが、東京に来たにもかかわらず、オレに会うことはできないと言っていた
もしかすると小料理屋にいるかも知れないとは思ったが
まさか女性といるとは思わなかったし
それも一緒にいるのが「杏奈」だったことに、とても驚いた
話では耳にしていても、実際に目の当たりに杏奈を見るのは初めてだった
今夜は、美穂と一緒に泊まることができるはずだったわけで
とうぜん、二人で泊まるように手配をしていた
こんな遅い時間に杏奈といるということで
「もしや」と不安になったり、嫉妬心を抱いたのかも知れない
そんなことを僅かの時間で考えることは出来た
美穂は次に「月の迷宮」高橋洋子のこの曲を歌い始めた
そして曲が終わりに近づいてきたとき
美穂の歌声が涙声に変わっていった
そんな美穂の頭をオレは撫でていた
そして、歌い終わった美穂の肩をオレは抱き寄せた
今夜は彼氏と過ごす最後の夜だ
普通だと別れるのに「さよなら」で終わりなのに
一緒に生活していたために、引っ越しをしない限り顔を見なくてはいけない
辛さは口で言うよりも、まるでボディーブローを食らったように
じんわりと後になればなるほど効いてくるのである
美穂を慰めていると、杏奈は急に立ち上がり、携帯を持ったまま外に出ていった