美穂にメールして、どこか飲むところは無いかと聞くと

「むくどり」という居酒屋を教えてもらった

寿司屋の大将に場所を聞くと、駅の南口にあると教えてもらった

ビール大瓶2本に、日本酒4合・・もう完全にいってしまっている状態だ

こうなれば、飲めるまで飲むしかない

オレは大将にお礼を言うと、寿司屋を出て「むくどり」に行こうとした

しかし、寿司屋を出てすぐそばに小さな店を見つけて入ってしまった

むくどりだろうが、何だろうがどこに行こうとも関係なかった

その店は、カウンターに8人ほど座れて、テーブル席が1つあった

お客は2人いて、カウンターの中には30か40そこそこのマスターがいた

オレは入り口近くのカウンター席に座り、飲み物を注文した

「すいません、ビールください」

そして、店に張り出してあったメニューを見た

牡蛎酢、イクラ・・・?

ふと思った

「あっ、もしかしてこの店だったのか」と

美穂は前からよく言っていた

「小料理屋に行ってきた」

そして、つい最近聞いたときに、牡蛎酢やイクラを食べたと

前から美穂は良く小料理屋に行っていて、そこには35才ぐらいのマスターがいる

しかし、その店の名前は教えてくれなかった。

美穂にとっては隠れ家的な場所で、とても大事な場所なのだそうだ

誰にもそのような場所があっても不思議では無いので深く追求することはしなかった

あえて店の名前を書くことは控えることにするが、魚の名前であることだけ言っておく

オレは、美穂にメールした

すると彼女からはメールが返ってきて、この店では彼女の話はしないようにと書いてあったのだ

もししたら「絶交」と書いてあった・・・まるで小学生のようだ

まあ、それはそれで仕方ないことであろう

オレは、何品かの料理を注文し、ビールを飲み終わると、コップの冷酒を飲み始めた

マスターとは広島から来たことを話はしたが、美穂のことは話してはいない

ただ、美穂にメールする前にこう言っていた

「この店に来る女性を多分知っています」と

もしかしたら、何かしら感づいていたかも知れないが、こういう仕事をする人間は

知っていても、知らないふりをしなければならない事もある

マスターと話も弾んでいたが、女性の話になったときだ

「雪国のトンネルを抜けると、またトンネルだった」とマスターが話したのだ

偶然ではあったが、今回広島空港に向かうリムジンバスの中から、大阪の佳奈子に送った

メールの文面に、たまたま書いていた言葉だった

「北国のトンネルを抜けると・・・」の話は美穂との関係において言ってきた

広島バスセンターから出て、リムジンバスに乗っています。
一人感傷的になっています。あー情けなや、いい年をして。
今までのパターン通りに「北国のトンネルを抜けると崖下に落っこちた」
になってしまいそうで仕方ないよ。
せめて「北国のトンネルを抜けるとまたトンネルがあった」ぐらいになってほしいよな。

このメールを見たマスターも大受けだった、偶然とはいえ面白い・・

いやいや、面白いで終わってもらっては困るのだが

それとは別に偶然が重なった

後から入ってきたお客さんが、何と広島出身の男性だった

それも、市内の出身で完全に同郷の人間だ

高校の話やら、野球の話やらで飽きることもなく時間を過ごすことが出来た

そうしているうちに、夜も10時半を回ろうとしていた

オレはマスターにこういった

「マスター、また後で来ます・・・女性を連れて」

誰を連れてくるかは当然分かるはずもなかったが

彼女を迎えに行かなければならなかった

このとき既に、オレの思考回路は暴走寸前状態で

冷静な判断は出来にくくなっていたのかも知れない

3時間で、ビール大瓶2本、生ビール1杯、お酒熱かんで4合、冷酒2合・・この程度だ

このあとに起こる悲劇など、全く考えても見なかった・・