広島に帰ってからの自分は、今までと比べものにならないほどに落ち着いていた
美穂と小さいが初めて喧嘩したことが、彼女を信頼するきっかけになったのだ
美穂とは毎日のように話をしていた
彼女も、今までとは違ってオレの懐具合も気にするようになった
「しげちゃん、電話代がもったいないからメッセで話そう」
もったいないという言葉はこれまで聞いたことがなかった
美穂が眠れないときは、眠れるまでずっと話してやった
子供が眠る前に絵本を読み聞かせたり、子守歌を歌ってるようにだ
時には、話ながら眠ってしまうこともあったが、オレはそれでも構わず待ってやった
2時間ほどして、美穂が目を覚ましたときにでも側にいてやりたかった
美穂が、用事があって起きないといけないときには何時であろうと
モーニングコールをしてやった、起きるまで何十回でも電話をかけ続けた
ある日、美穂がこんな事を言い出した
「しげちゃん、東京に1週間位、来れないかな」
「近くのウイークリーマンションにでも、泊まってくれればいいよ」
「そうすれば、食事だって作ってあげられるし、ずっと一緒にいてあげられる」
「オレに、来て欲しいの?」
「珍しいこともあるもんだな・・・急にどうしたの?」とオレは尋ねた
「彼が10月一杯でここを出て行くの、11月一杯は居てもいいと言われたから」
「全然気持ち的に違うよ、彼がいなくなってしまったら・・・」
「逃げ隠れするようにしながら一緒にいることもしなくていいし」と美穂は言った
彼女から来て欲しいと言われるのは、初めてだったが言われて嬉しくないはずはない
ただ、子供の事を考えるとそんなことが出来るはずもない
「でも、1週間は難しいな出来てもやはり、3泊ぐらいだし・・」とオレは言った
「もう、子供も大きいんだから大丈夫だよ」と美穂
「まあ、考えては見るけどね」
「北海道に旅行に行くのはどう?」とオレ
「うーん、それもいいかもね」
「色々とやることも有るけど、行ってみたいしね」と美穂
今が、一番充実して幸せな時間かもしれないと、オレは思った