銀のほのおの国 | バベルの図書館

銀のほのおの国

銀のほのおの国 (福音館文庫)/神沢 利子



「生きる事と自然の秩序の意味をつきつける和製ファンタジー」

家に飾られたトナカイのはく製にむかって冗談でおまじないをいった主人公の少年と妹は、突然実態をあらわしたトナカイに引きずられ、別世界へとつれていかれます。


そこはかつてトナカイが支配する平和な世界でしたが、今は青イヌが支配する殺伐とした世界になっていました。


少年がおまじないで生き返らせたのは、かつてトナカイの王国「銀のほのおを国」を支配していたはやて。かれは青イヌの策略で一度命を失いましたが、少年のおまじないによってよみがえり、ふたたび青イヌと自然界の秩序をかけて戦うことになります。


この作品はトナカイと青イヌとの戦いを通じて、生きる事、自然とのかかわり、善悪の曖昧さといった 骨太の問いを投げかける、児童文学の域を超えた日本ファンタジーの傑作です。

自然の中ではこの小説で描かれるように、常に過酷な生存競争が繰り広げられています。そしてそこに善悪というものは無く、それを超えた秩序によって保たれています。

その中で唯一人間だけがそうした過酷さから離れたところにいる現実に対して、別世界に送り込まれた兄妹は残酷な世界を目の当たりにします。弱き者は簡単に屠られ、他者の血肉となっていく厳しい世界を。

そして戦いの後も、作品の最後もこの小説は答えを出しません。最後の主人公とはやての会話の通り、自ら考え判断することを促します。 そこがこの作品の奥行をさらに増しているといえるでしょう。

そして、平易で余計な飾りの無い文章がシンプルに力強く心に訴えかけてきます。 世代を超えて読みつなぎたい作品と言えるでしょう

難易度 ★★☆☆☆
インパクト ★★★★☆
泣ける度 ★★★☆☆
笑える度 ★☆☆☆☆
怖い度 ★★☆☆☆
考えさせられる度 ★★★☆☆
推定読了時間 5時間