君主論 | バベルの図書館

君主論


君主論 (講談社学術文庫)/マキアヴェリ

「深く強烈な実用書」

都市国家が乱立し、教皇派、皇帝派が対立し、イスラム圏の脅威もぬぐい去れないルネサンス期のイタリアは、壮麗な文芸が勃興したのとは対照的に、権謀術数ひしめく薄暗い世の中でした。


そんな時代の中、フィレンツェの外交官だったマキャベリが記したのがこの作品です。


もともとリウィウス論で知られるように共和主義者と考えられていたマキャベリですがこの作品では徹底して専制君主のあるべき姿を、故事を引用しながら論じています。本を書いた理由がメディチ家への就職のためだった事を考えれば当然ですが、他の共和主義者達からは日和見主義の裏切り者とののしられたそうです。


ですが外交官としてイタリア中を駆け巡り、様々な政治の表裏を体験してきた彼の言葉は深く強烈なリアリズムに裏打ちされており、読む者に強い印象を与えます。この作品は明確な実用書であり、夢や理想を語りません。そのため政治は宗教や芸術から距離を置くことを推奨しています。


彼は君主に対し徹底して正義と、そして自身の正義を貫くために力(法と軍備)を持つことを説きます。また国家の存亡のためには権謀術数含め手段を選ばない事を肯定します。そのあまりに明確な論調のため、マキャベリズムという言葉を生み、後世に渡って賛否を巻き起こしたことは言うまでもありません。


この本の真に意味する事を実践できるのは、膨大な知識と胆力、勇気、行動力、バランス感覚を持ったリーダーだけでしょう。マキャベリは大ロレンツォやチェーザレ・ボルジアのような人物を想定し、そしてそうした人にイタリアを統一し、人々が安心して暮らせる世の中を作って欲しいと切望していたのだと思います。


翻って我が国ですが、君主論を曲解したかのような嘆かわしい状況な事が残念でなりません。


--常に良き力をもつ者は、良き友にも恵まれるものである。マキャベリ--


難易度 ★★★☆☆
インパクト ★★★★☆
泣ける度 ★☆☆☆☆
笑える度 ★☆☆☆☆
怖い度 ★★☆☆☆
考えさせられる度 ★★★★☆
推定読了時間 6時間