マタタビ潔子の猫魂 | バベルの図書館

マタタビ潔子の猫魂

マタタビ潔子の猫魂(ねこだま) (ダ・ヴィンチブックス)/朱野帰子


「小さき者の放つカタルシス」



第4回のダヴィンチ文学賞を受賞した作品ですが、私は京極さんを初め、妖怪物が結構好きなため手にとってみました。


さえない独身派遣社員の潔子は実は血筋から憑き物を引き寄せる力を持った一族の唯一の末裔であり、その飼い猫は聖武天皇の時代から潔子の先祖に憑きながら悪霊を退治をし、その魂を食らうことで生きながらえてきた猫魂です。


潔子は職場では疎まれ、浮いた話もなく、もんもんと怪しいスピリチャルカウンセラーの言葉を支えに生きています。そして時折彼女の周囲の人々の中にオニヒトデやセイヨウタンポポといった外来生物に取り憑かれ、潔子に執拗にいやがらせをしてくる人が現れます。


そして嫌がらせに我を忘れて心に隙をのぞかせた時、猫魂はするりと彼女に入り込み、外来生物の憑き物を痛快に退治していくというストーリーです。


ヒーローでも美少女でもない小さき者である主人公が突然力を持って活躍(?)するというのはある種のカタルシスと同情をもって少なからぬ人の共感を得るものです。そして流行りで日本につれてこられた外来生物が憑き物になって暴れるというもの斬新ですが、ちょっと考えさせられたりもします。


妖怪退治中は記憶がないため結局潔子は何かに目覚めるわけでもなく、これからもさえない生活が続くのでしょう。それを糊口のためとはいえ、何か見捨てることもできずいつまでも寄り添う猫魂のシニカルな姿が目に浮かびます。


軽妙で「いかにも文学作品」というものからは程遠いですが、つらくても誰にでも味方はいるものだと、少し元気をもらえる作品だと思います。


難易度 ★☆☆☆☆
インパクト ★★☆☆☆
泣ける度 ★☆☆☆☆
笑える度 ★★★☆☆
怖い度 ★☆☆☆☆
考えさせられる度 ★★☆☆☆
推定読了時間 3時間