イタリア紀行 | バベルの図書館

イタリア紀行

イタリア紀行 上 (岩波文庫 赤 405-9)/ゲーテ

「国を政り、世界を謳い上げる」


鳩山総理退陣のニュースを聞いて、何故かゲーテを思い出してしまいました。


ご存知の通り、ゲーテは大文豪であり、科学者であり、哲学者でもある賢者ですが彼は政治家としても卓越した手腕を発揮しています。


若干26歳の時に当時ドイツの小公国だったワイマールに招かれ、宰相(日本で言う首相)として、10年にわたり政務に没頭します。そして産業振興、文教政策に力を注ぎ、ワイマールの発展に大きく貢献しました。そしてその功績をドイツ皇帝に認められ貴族に列せられ、ヨハン・ヴォルフガング・”フォン”・ゲーテと、貴族の証であるフォンを名乗る事を許されます。


このように見事な業績を成し遂げたゲーテですが、ワイマール時代は長きにわたって人妻と不倫をしており、そしてあるとき行き先も告げずに、宰相職をほっぽりだしてイタリアに旅に出てしまいます。


今回紹介する作品は、仕事を放棄してイタリアに行ったゲーテの紀行文です。


ローマに入り、そこからナポリ、シシリーと2年間に渡りイタリアを旅したゲーテは既にウェルテルでヨーロッパ中に名を知られた有名人でしたが、素性を隠して旅を続け、イタリアの太陽の下、都市や村、自然、市井の人々とのふれあいを心から満喫し、そして忘れかけていた詩人としての感性を呼び覚まして、この紀行文を美しく活力溢れる文章で彩ります。おそらくイタリアについて書かれた作品としては最高の一つに数えられると言えるでしょう。


こうして身勝手な放蕩の末ワイマールに戻ったゲーテですが、人々は彼の帰国を切望し、再び宰相として政治の世界に戻ります。


わが国の首相は失意と批判の中職を去り、一方は喝采を持って再び首相として迎えられる。この差は一体何なのでしょう。これが冒頭で私がゲーテを思い出した理由です。


そもそも比較する対象のスケール感が違いすぎるのかもしれませんが、やはり人が政治に求めるものは共感できる信念、実行、そして結果を出すことなのだと思います。そしてそうした力ある人に対しては、多少の問題があったとしても人々は受け止める事ができるということなのかもしれません。


国を政り、放蕩し、世界を謳い上げる。これぐらいの人が現れないかと思うのは、少々欲張りすぎなのでしょうか。


難易度 ★★★☆☆
インパクト ★★★★☆
泣ける度 ★★☆☆☆
笑える度 ★★☆☆☆
怖い度 ★★☆☆☆
考えさせられる度 ★★★★☆
推定読了時間 12時間