記憶の書 | バベルの図書館

記憶の書

記憶の書/ジェフリー・フォード

「 確かな愛の物語 」


世界ファンタジーノベル大賞を受賞した白い果実 全三部作の内の二作目です。


前回白い果実をめぐって崩壊した理想形態都市から脱出した主人公クレイは、小さな村に避難し静かな生活を営みます。


ところが村人たちが次々と眠りから覚めなくなる病におかされ、クレイは病の治療法を求めて再び廃墟と化した都市に戻ります。そこで同じ病に冒された独裁者ビロウの姿を発見したクレイは、治療法を求めてビロウの記憶の中に潜入します。


崩壊し始める記憶の中、水銀に浮かぶ宮殿でクレイは幻の愛に溺れ、そして絶対的な悪と認めていたビロウの意外な過去に触れながら、現実の世界に引き戻されます。


結末は本書に預けますが、記憶の中で繰り広げられた冒険でありながらクレイは本当の愛の物語に触れたのだと思います。そして最後に登場する緑のヴェールの謎を残し最終巻へとつながっていく流れは前作ほどの奇抜な仕掛けはありませんが透明感は増しており、「記憶の書」という象徴的なタイトルに相応しい一級のファンタジーに仕上がっています。


翻訳は前作の山尾さんに代わって貞奴さんが参加しています。山尾さんのような圧倒的な完成度はありませんが、美しく脆い記憶の世界が十分に表現され、白黒映画を見ているような気分にさせてくれる作品に仕上がっています。


難易度 ★★☆☆☆
インパクト ★★★☆☆
泣ける度 ★★☆☆☆
笑える度 ★★☆☆☆
怖い度 ★★☆☆☆
考えさせられる度 ★★★☆☆
推定読了時間 5時間