ジョーカー・ゲーム | バベルの図書館

ジョーカー・ゲーム

ジョーカー・ゲーム/柳 広司


「極限状態だけが、生きている事を実感させる」



日本は太平洋戦争において物質的にも戦略的にも政治的駆け引きにおいてもあらゆる面で完敗だったわけですが、そのような状況下で孤高の活躍を見せた少数部隊がいたという設定は創作者の意欲と読者の好奇心を刺激し、過去にも多くの作品が生み出されてきました。


この小説もそうした作品の一つですが、特筆すべきは日本のスパイ活動を格子に据えているところです。実際戦時中の日本はゾルゲ事件に代表されるように、スパイ活動は貧弱で暗号も筒抜けという状態でしたがそうした領域に狙いをつけて、かっこいい小説にしたてあげた作者の選球眼は愁眉と言えると思います。


太平洋戦争中に存在した秘密諜報機関「D機関」とそこに属する選び抜かれ、鍛え上げられたエリートスパイ。そして機関を創設した神と呼ばれる中佐。これだけでミステリーファンの心を動かすには十分ですが設定に負けない何かが迫ってくるような緊迫感と早い展開、そして一切の無駄な描写を除いてスパイ活動のみに注力した潔さが、エンターテイメントとしての完成度を高いレベルに押し上げています。


そして小説の最大の見どころはマシーンと化すことを自らに義務づけたスパイ達の死線を楽しむような生き様です。平穏を唾棄し、極限状態こそ生きる場所と定め、中佐の命令に絶対に服従する。そうする事だけが生を実感させるというスパイ達はリアリティのある闇のサイレント・ヒーローとして、なにか颯爽とした印象すら与えます。謎解きの意外性はあまりありませんが、アクションとして読めば間違いなく一級品です。


既に続編がでていますので、そちらも今後紹介したいと思います。


難易度 ★★☆☆☆
インパクト ★★★☆☆
泣ける度 ★☆☆☆☆
笑える度 ★☆☆☆☆
怖い度 ★★☆☆☆
考えさせられる度 ★★☆☆☆
推定読了時間 4時間