チャイルド44 | バベルの図書館

チャイルド44

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)/トム・ロブ スミス

「全体主義。それは小説にとって最高の素材」


全体主義社会というのは、はたで見ている分には非常に興味深いものです。そこでは簡単に黒は白になり、白は黒になります。そしてその世界に盲目的に軍隊的に順応できる者にとっては、このディストピアはまさにユートピアと化します。


この小説はそうした全体主義社会の極致とも言えるスターリン時代の旧ソ連を舞台にしたミステリーですが、当時の人々の暗澹たる生活や感情を見事に描き切っており、ミステリーを超えた文学的格調さえ感じさせ、様々な賞を受賞した事に素直に納得させられます。


体制に従順に行動し、出世街道を行く主人公は、身内の裏切りで左遷されます。そして左遷先のとある事件をきっかけに彼は人間性を取り戻し、体制に逆らいながら事件の解決に奔走します。そして自らの生い立ちの闇に迫る結末へと向かっていきますが、重厚ながらスピード感を保ちつつ、一瞬たりとも飽きさせないその構成力にはただただ脱帽です。


若干29歳のイギリス人が書いた作品ですが、若き天才作家の出現と呼ぶにふさわしい作品です。



難易度 ★★☆☆☆
インパクト ★★★★☆
泣ける度 ★★★☆☆
笑える度 ★☆☆☆☆
怖い度 ★★★☆☆
考えさせられる度 ★★☆☆☆
推定読了時間 4時間(上巻)