自白の研究 | バベルの図書館

自白の研究

浜田 寿美男
自白の研究―取調べる者と取調べられる者の心的構図

「人の心の不確かさに、自白という一点で切り込む大作」


心理学ブームといわれて久しいですが、裁判や取調べという状況における心理を何十年にも渡って追求してきた著者は、凡百の学者とは一線を画する大家と呼ぶに値する人だと思います。


その著者の集大成とも言える本がこの一冊です。取調べというシチュエーションの中で、人は何故(その結果有罪になるかもしれないにも関わらず)虚偽の自白をしてしまうのか。そしてそれは何故いつの時代も無くならないのか。この一点に集中して、それを明らかにするため古今の冤罪の事例、はては魔女狩りにまでタイムスリップする、非常に興味深い力作です。


私が特に興味深かったのは、罪を犯していないにも関わらず、長時間取調べを受けているうちに自分の記憶に不安が生じ、やっていないにも関わらずやったと思い込んでしまうという心の動きでした。


認めてしまえば、ヘタをすれば無期懲役や死刑という状況にも関わらず、取調べという特殊な状況では人は全く予期せぬ心理状態になってしまうというのは(不謹慎ですが)好奇心をそそられると共に、非常に複雑な気持ちにさせられます。


私は個人的にですが、「疑われる」という状態が一番居心地が悪く、自分を不愉快かつ不安にさせます。もちろん取り調べ室にいくような事件を起こしたり巻き込まれたりしたことは幸いありませんが、普通に生きていても、たまに疑われる状況に陥る事はあるものです。まして重大事件の取調べとなれば、私自身も著者の言うような常識とかけ離れた言動をしてしまうかもしれません。


事件に巻き込まれないことを祈るばかりですが、一方でこうした研究がしっかりと成されていることにある種の安心感を覚えるとともに、非常に貴重な知識体験をさせてくれる本だと思います(ただし700ページを超える大作ですので、それなりに腰をすえて読む必要がありますが。)


難易度 ★★★★☆
インパクト ★★★☆☆
泣ける度 ★☆☆☆☆
笑える度 ★☆☆☆☆
怖い度 ★★★☆☆
考えさせられる度 ★★★☆☆
推定読了時間 13時間