異邦人 | バベルの図書館

異邦人

カミュ, 窪田 啓作
異邦人


「人と世界を遠ざけるもの。愛も殺人も理由などない」



久しぶりに日本に戻りましたが、あまりの寒さと乾燥に体がついていけていない状況ですが、食べ物のクオリティや久しぶりに会う友人達はやはり良いもので、仕事の忙しさも忘れて楽しんでいます。


ですが一方で、町を歩きながら何かかすかな違和感のような物を感じている自分に気づきました。長い海外暮らしのせいだろうと片付けようとしたのですが、何か釈然とせず理由をあれこれ考えていた時に何故かこの本の事を思い出してしまいました(ついでに同名の久保田早紀の曲もですが。)


太陽照りつけるアルジェと真冬の日本はあまりに対照的であり、またこの本がかかれて60年あまりたっているにも関わらず心に多くを問いかけてくる傑作です。


よく不条理の小説と呼ばれ、サルトルの実存主義と対比させられたりするこの作品ですが、私にはそれほど高尚な事ではなく、もっと身近な誰もが感じている心の有り様を鋭く描いているように思います。


社会の求める理性とそこに調和しようとする個人の生理の葛藤。そこから生じる不安ともの哀しさ。さらには調和しようとする事すらない倫理の欠落した者。そしてそれを最後には救ってくれる世間の無関心。そうした状態にさらされた者を異邦人というならば、世界には多くの異邦人が溢れている事になります。


太陽のせいならぬ冷たい風のせいとでもいって人を殺める気は毛頭ありませんが、きっと私の感じる違和感は、海外暮らしのせいなどではない、生きるうえで避けられない心の棘なのかもしれません。


難易度 ★★★☆☆
インパクト ★★★★☆
泣ける度 ★☆☆☆☆
笑える度 ★☆☆☆☆
怖い度 ★★☆☆☆
考えさせられる度 ★★★★☆
推定読了時間 7時間