大宰相 | バベルの図書館

大宰相

さいとう たかを, 戸川 猪佐武
歴史劇画大宰相 (第1巻)

「権力とは戦い奪う物。この国の有り様を描こうとした政治家たちの黙示録」


自由民主党が立党50周年を迎えたそうです。


私は自民党支持者ではないため特に感慨などはないのですが、このニュースを聞いて昔読んだこの漫画の事を思い出しました。


この作品は戸川猪佐武氏の「小説吉田学校」を劇画の王様さいとうたかお氏が漫画化した、自民党政治の黙示録です。全部で10巻。吉田茂から中曽根康弘までを大宰相の時代として、時代背景をおりまぜながらまさに劇画調にその権力闘争の歴史を描いています。


この作品の最も特徴的な事は、政策や政治よりもあくまで権力闘争に主眼を置いた点であり、サンフランシスコ平和条約も沖縄返還も新安保も、全てが権力闘争の延長にあるように描いている点です。そのため敢えて黙示録と表現してみました。


政治が今より身近であった時代、この国の権力者達が虚虚実実の駆け引き、獰猛とも言える生き残りゲームを繰り広げながらも、人間味あふれる吸引力で国を引っ張っていった様は読むものを引きつけます。また小泉さんが刺客だなんだと言われましたが、昔から似たような事がさんざん行われてきたことがわかり、その点も興味深いものがあります。


党として、政治家としての生き残り中で、戦後の占領政策から抜け出し日米安保体制の中で高度成長を牽引したその功績は素直に認めざるを得ないところですが、一方で政官財の癒着、社会主義的とも言える富の再配分といった現在ではあまり通用しない構造を強固に作り上げすぎたために、時代の変化に対応しづらい国にしてしまったという面も否定できません。


いずれにせよ、自民党という政党を長きにわたって支持してきたのは最終的には国民であり、その功罪は他人事ではなく我々国民自身にも起因する事を素直に受け止める必要がある、そうした面があるのは事実です。


それにしても、権力の座についた大宰相達の多くが、無常と思える終わり方をしているのは何故なのでしょう。彼らすら自民党というあまりに日本的なシステムを支える駒の一つに過ぎなかったのでしょうか。そんな事を考えさせられる作品でした。


難易度 ★★☆☆☆
インパクト ★★★☆☆
泣ける度 ★★☆☆☆
笑える度 ★☆☆☆☆
怖い度 ★★☆☆☆
考えさせられる度 ★★★☆☆
推定読了時間 3時間(一冊)