原寸美術館 | バベルの図書館

原寸美術館

結城 昌子
原寸美術館 画家の手もとに迫る

「接近せよ。そこに美の楽園がある」


ロンドン時代にヨーロッパ中の美術館巡りをした経験があります。


ルネサンスから印象派、写実主義、シュールレアリズムと節操もなく観覧しまくりましたが大抵ヨーロッパの美術館は規模も壮大で展覧している作品数も多く、かといって時間は限られているため、結果駆け足で見ざるを得ないという事が往々にしてありました。また天井画や壁画、一部の有名な作品などは遠目にしか見れないため、全体の印象を感じる事はできますが細部を注意してみるという事は叶わないのが現実です。これは美術館を訪れた人にとって共通の悩みではないでしょうか。


この本はまさにそうした欲求不満を見事に解決してくれる企画の勝利と言える一冊です。絵画に接近して一部を拡大して掲載するという方法は、視点を変えるだけでこんなにも多くの新発見を見るものに与えてくれるのかと感嘆させられます。


モナリザの背景が何か月面のような事。ミケランジェロの描く肉体の躍動感。ボッティチェリの春はまさに花の饗宴ともいえる優雅さです。そしてフレスコやテンペラといった技法、指でなでつけたりナイフの腹で削ったりといった画家それぞれの特徴的な技の数々を理屈ではなくリアルに感じ取る事ができます。


ページ全体に広がる絵の数々は、最高レベルの印刷も相まって目もくらむような色彩です。理屈も解釈も抜きにして目にたたきつけられる天才達の情熱を心行くまで堪能できます。


この企画が第二弾、三弾と続けられる事を切に願って止みません。


難易度 ★★☆☆☆
インパクト ★★★★☆
泣ける度 ★★☆☆☆
笑える度 ★☆☆☆☆
怖い度 ★☆☆☆☆
考えさせられる度 ★★☆☆☆
推定読了時間 6時間