五分後の世界 | バベルの図書館

五分後の世界

村上 龍
五分後の世界


「野間文芸賞受賞記念。 村上龍の真骨頂は戦闘物なのか」


「半島を出よ」が野間文芸賞を受賞との事で、そういえば村上龍氏の作品をひとつも紹介していないという事に気づきました。


という事で何か一冊と思案した結果、今回はその受賞作ではなく、五分後の世界を紹介したいと思います。


村上龍氏というと限りなく透明に近いブルーやコインロッカーベイビーのようなちょっと壊れた人を何か思いいれ一杯に、共感を滲ませながら描くというのが真骨頂ですが、私は実は戦闘物を書かせたら当代随一なのではと思わされたのがこの作品です。


主人公がひょんな事から5分後の世界、戦後降伏することなくゲリラ戦を続けながら地下で生存を続ける別の歴史を歩む日本に迷い込み、そこで戦闘に巻き込まれ理屈も納得感も何もないままとにかく必死で生き延びようとするというのが話の格子です。つまりSFなのですが、SFとしての作りは設定や歴史認識の面からそれほど立派な物とは言えないようい思います。


雰囲気的には戦国自衛隊とかバトルロワイヤルに通じるものがあるのですが、この本が秀逸であり私を引き込んだのはその戦闘シーンの描写でした。


その臨場感と爆発力は凄まじく、オリバーストーンもたじろくのではと思うほどの無残さと生々しさです。火薬と血の匂いがするような、という形容がありますが文章でここまで表現するのは、村上氏が本来内面に持つのはこうした肉食の残忍さなのではと思わせる内容でした。


経済物やハローワークもいいですが、たまには自分の本質(?)に立ち戻ってこうした作品を書いて欲しいなと思わせる一冊です。


尚、続編にヒュウガウィルスというのもありますが、それはおまけ程度に読むのがいいかと思います。


難易度 ★★☆☆☆
インパクト ★★★★☆
泣ける度 ★★☆☆☆
笑える度 ★☆☆☆☆
怖い度 ★★★☆☆
考えさせられる度 ★★☆☆☆
推定読了時間 5時間