白夜行 | バベルの図書館

白夜行

東野 圭吾
白夜行

「心の闇。それは白夜のように心をざわつかせる」


今度ドラマ化(映画化?)されると聞き、この本を紹介する事にしました。


東野氏というと、どちらかというとスタイリッシュでスピード感ある作風のミステリー作家という印象がありますが、この作品はそこからかけ離れた独特の冷たい重さに満ちています。


心に傷を負った少年と少女が成長する過程で、彼らを取り巻くように様々な不気味で、居心地の悪い事件が次々と起こります。無理にでも日のあたる場所を行こうとするかのような少女と、その周囲に影のように気配を見せながら闇を行く少年。最終的な目的があるようでもなく、何か淡々と日常と事件が交錯し、そして哀しいとしか形容のしようの無いラストに繋がっていきます。


私は北欧旅行をした際に白夜を体験しています。夜の11時くらいですと「こんな時間でも明るくて、遊びたい放題だな」などと気楽に思っていましたが、2時、3時になると何か落ち着かない、はやく過ぎて欲しいという不安な感情をかきたてられました。


心の闇とともに生きていく事を白夜を行く事に投影した東野氏の切れるようなセンスとミステリーの枠を超えたスケール感にただただ圧倒されます。前回紹介した浦沢氏のMONSTERやPLUTOも似た雰囲気を醸し出しているかもしれません。


この作品は直木賞にノミネートされながら受賞にはいたりませんでした。理由は私には分かりませんが、しいていうならば賞の範疇を超えてしまったから、という事ではないでしょうか。


昼と夜の境が無い世界。善と悪の境界の無い心。とても人が相容れられるとは思えないのに何故か惹きつけられて止まない、そうした心を締め付けられるような読後感の作品です。


難易度 ★★☆☆☆
インパクト ★★★☆☆
泣ける度 ★★☆☆☆
笑える度 ★☆☆☆☆
怖い度 ★★☆☆☆
考えさせられる度 ★★★☆☆
推定読了時間 9時間