ディナモ―ナチスに消されたフットボーラー | バベルの図書館

ディナモ―ナチスに消されたフットボーラー

アンディ ドゥーガン, Andy Dougan, 千葉 茂樹
ディナモ―ナチスに消されたフットボーラー

「サッカーは戦争。それは単なる比喩でなかった」


かつてナチス占領化のウクライナで「死の試合」と呼ばれる伝説となったサッカーゲームが行われました。地元の強豪チームだったディナモ・キエフのメンバーを中心とする即席チーム「FC スタート」が、サッカーを 占領政策やプロパガンダに利用しようと考えるナチスの送り込む数々のドイツチームと戦い、 脅迫やあからさまな不正審判にも屈せず全てのチームを撃破します。その結果スタートのメンバーは強制収容所に 送られ、その多くが殺されました。この本は戦争と政治に翻弄された東欧サッカーの歴史を綴ったスポーツノンフィクションの傑作です。


戦時中の美談やドラマといったものは数多く存在しますが、この本が際立っているのは サッカーという現在最大の国際スポーツが、戦時という特殊な状況化で人々にとってどういった価値を もっていたかを、淡々と偏見や恣意性を極力除いた形で紐解こうとしている点にあります。


東欧サッカーというのはかつてのハンガリーをはじめ、強豪国が集まるエリアです。 その影響力は1960年以前と比べれば落ちて来ているといわざるを得ませんが、現在でも 十分に高いレベルに位置している事は間違いありません。


また東欧という地域は西欧、ロシア、アラブといった地域の間に位置し、歴史的にも文化的にも 非常に難しい立場に立たされてきた場所です。 こうした背景と戦争という非日常の中で、サッカーが人々に光を与え誇りを保たせる力を持っていたことに驚嘆せざるを得ません。


来年はワールドカップイヤーですが、日本だけでなく東欧のチームにも注目してみたいと思いました。


難易度 ★★☆☆☆
インパクト ★★★☆☆
泣ける度 ★★★☆☆
笑える度 ★☆☆☆☆
怖い度 ★★☆☆☆
考えさせられる度 ★★★☆☆
推定読了時間 4時間