堤中納言物語 | バベルの図書館

堤中納言物語

三角 洋一
堤中納言物語

「日本が誇る"もののあわれ"。温故知新が古の姫を蘇らせる」



宮崎監督関連4冊目は、前回述べた日本の古典「堤中納言物語です」。


作者不詳(だったと思います)の10篇の短編が編集されたこの作品は、平安人の豊かな感性を余すところなく伝えるだけでなく、社会風刺やアイロニーの要素も含まれ、他のメジャー作品と比較して異色の存在といえます。


その中に「虫めづる姫君」という作品があります。 お歯黒もせず、歌も読まず、庭に虫の幼虫を飼っては、それが成長して飛び立っていく様をひたすら愛でる姫君の話です。当時の価値観で言えば全くの変わり者であるこの姫を、両親は心配しお見合いなどもさせようとするのですがまったく見向きもせず、結局そのまま変わり者だったというところで話がぱったり終わってしまいます。


今なら価値観を共有できる人もそれなりにいるのでしょうが、当時は恐らく妖怪に憑かれているとでも思われたでしょう。この話を読んだ宮崎監督は姫の行く末が気になって仕方なくなったそうです。


そしてこのアウトサイダーな東洋の姫とギリシャ神話の勇敢な姫が宮崎監督の頭の中で奇跡の融合を果たし、風の谷のナウシカという名作が生まれたようです。


そんなビッククランチを脳内で発生させてしまう宮崎監督と同時代に生きていられる事の幸せを感じてしまいました。


ところで本作品に収められている他の作品、中でも「このついで」や「花桜折る少将」なども秀逸です。短い話が多いので、秋の読書にたまには日本の古典も、という方は是非手に取って見て下さい。


難易度 ★★★☆☆
インパクト ★★☆☆☆
泣ける度 ★★☆☆☆
笑える度 ★★☆☆☆
怖い度 ★★☆☆☆
考えさせられる度 ★★★☆☆
推定読了時間 6時間