誰か | バベルの図書館

誰か

宮部 みゆき
誰か ----Somebody

「平然とファンを裏切れる宮部みゆきの奥深さ」


女流実力作家が続いたのに宮部さんを外す訳にはいかないと思いこの本を取り上げました。理由 模倣犯 といった代表作があるなかで、実はこの作品が私の宮部みゆきデビュー作でした。


読後の印象としてはこれといった仕掛けも意外なラストもないのですが微妙な人間関係・家族関係、心の動きといったものが丁寧に描かれている良書といったところで、実を言うとそれほどインパクトは感じなかったのが事実です。


ところが後で前述の模倣犯や理由を読み、ようやくこの本の真価がどういうものに気付かされました。本来(と簡単に言って良いのかわかりませんが)の宮部さんの作風は普通の人が些細なきっかけで堕ちてしまう、そうした日常や世間に潜む罠をセンセーショナルに時代背景を織り交ぜながら語っていくという物でした。


そうした前提でこの「誰か」を読めばファンは恐らく「裏切られた」という気持ちになるのではないでしょうか? 「どんな人にも心の闇がある」という部分でつながっていると言えなくもないですが、他の作品と比べれば退屈な感じがする事は否めません。ですが確信犯的に平凡に終始し、それを書き切ってしまう事で自らの守備範囲と可能性を示そうとする彼女の大胆さ、奥深さを感じずにはいられませんでした。


その後ファンタジーにも手を広げ、(成功したかどうかは別にしても)挑戦し続ける彼女はやはり今日を代表する”小説家”なのだと思います。


難易度 ★★☆☆☆
インパクト ★★☆☆☆
泣ける度 ★★☆☆☆
笑える度 ★☆☆☆☆
怖い度 ★★☆☆☆
考えさせられる度 ★★★☆☆
推定読了時間 4時間