とある現場にて。 | 大人図鑑

とある現場にて。

一般人参加型のカラオケ大会の舞台現場があった。

おじいちゃんおばあちゃん総勢120組が、朝9時からベルトコンベアに乗ったマグロのように入れ代わり立ち代わり、舞台に出て魂の一曲を熱唱するという、ほほえましくも発狂しそうな長い現場である。

みなさんこの日のために用意した着物やドレスや仮装をそれぞれに纏い、その華やかさまで競う。天童よしみやキム・ヨンジャも真っ青の、見てて目が潰れるような大阪センス。それ、どこで売ってるんですか?

しかしもちろん御老人のこと、時間通りには来ない。というか自分の出番がいつなのかもわかってない人が多い。舞台袖は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。


「23番の方いませんか!」
「こちらへお並びください!こっちです!」
「〇〇さんいてはりません?〇〇さーん!」
「はい。」
「ああ、〇〇さん?よかった!いてはった!次ですよ!すぐ用意してください!」
「わたし〇〇ちがいますねん。」
「いや、あの、は?!」
「もうええ!先に次の人出てもらえ!『野郎船』オケ流せ!」
パパパパージャジャジャジャーン♪
「え!違う?『浪花のがしんたれ』?オケ止めて!照明落として!今のひと戻ってー!!」

オーバー60ageの百鬼夜行を捌きながらプログラムは進む。その時、衣装合わせで順番を狂わせた一人がやっと用意できたらしく、また羅刹の扉が開いた。
そこにはベルばらの衣装に身を包んだジェームス・ブラウンそっくりのおばちゃんが立っていた。

JB「おはようございます。」
ナワ「オハヨウ ゴザイマス‥‥!!」(下唇を必死に噛んでいる)


あの瞬間がピークだった。他にも100%ズラのひと、異臭がするひと、ヤ〇ザの怒鳴りこみetc、いろいろあったけど不思議なもんで、半分過ぎたくらいから何見ても驚かなくなった。慣れってこわいっスね。慣れってか、麻痺っスね。
ただ、なぜか2曲続けて歌うばあちゃんが舞台袖で生着替えしてるのを見たときは、あまりのショックに歯が全部抜け落ちたかと思った。


なかなか貴重な一日で鍛えられました。
音にも出るでしょうね。