ヴィクトール・フランクル さん

ヴィクトール・エミール・フランクル(Viktor Emil Frankl)

1905年3月26日生まれ、
1997年9月2日、92歳没。

オーストリア=ハンガリー帝国ウィーン レオポルトシュタット生まれの精神科医、心理学者、ホロコースト生還者。

1946年出版、『夜と霧』
 ヴィクトール・フランクルの強制収容所経験に基づいた作品。

夜と霧――ドイツ強制収容所の体験記録 単行本
V.E.フランクル (著), 霜山 徳爾 (翻訳)
みすず書房 (1985/1/23)

¥1,890
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本書は、みずからユダヤ人としてアウシュヴィッツに囚われ、
奇蹟的に生還した著者の「強制収容所における一心理学者の体験」(原題)である。
「この本は冷静な心理学者の眼でみられた、限界状況における人間の姿の記録である。
そしてそこには、人間の精神の高さと人間の善意への限りない信仰があふれている。
だがまたそれは、まだ生々しい現代史の断面であり、政治や戦争の病誌である。
そしてこの病誌はまた別な形で繰り返されないと誰がいえよう」
(「訳者あとがき」より)。

1956年8月の初版刊行と同時にベストセラーになり、
約40年を経たいまもなお、つねに多くの新しい読者をえている、
ホロコーストの記録として必読の書である。
「この手記は独自の性格を持っています。
読むだけでも寒気のするような悲惨な事実をつづりながら、
不思議な明るさを持ち、読後感はむしろさわやかなのです」
(中村光夫氏評)。

『夜と霧』 霜山版と新版(池田訳)について

「言語を絶する感動」と評され、
人間の偉大と悲惨をあますところなく描いた本書は、
日本をはじめ世界的なロングセラーとして600万を超える読者に読みつがれ、
現在にいたっている。

原著の初版は1947年、
日本語版の初版は1956年。
その後著者フランクルは1977年に新たに手を加え、改訂版が出版された。
みすず書房では、
改訂版のテキストよりまた新たに『夜と霧 新版』(池田香代子訳)を2002年に出版し、
現在は、
『夜と霧――ドイツ強制収容所の記録』霜山徳爾訳本と、
『夜と霧 新版』池田香代子訳との、
ふたつの『夜と霧』がある。
いずれもみすず書房刊。

夜と霧 新版 単行本
ヴィクトール・E・フランクル (著), 池田 香代子 (翻訳)
みすず書房; 新版 (2002/11/6)

¥1,575
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名著の新訳には、つねに大きな期待と幾分かの不安がつきまとう。
訳者や版元の重圧も察するにあまりあるが、
その緊張感と真摯さのためか、
多くの場合成功を収めているように思われる。
本書もまた、その列に加わるものであろう。
ユダヤ人精神分析学者がみずからのナチス強制収容所体験をつづった本書は、
わが国でも1956年の初版以来、すでに古典として読みつがれている。
著者は悪名高いアウシュビッツとその支所に収容されるが、
想像も及ばぬ苛酷な環境を生き抜き、ついに解放される。
家族は収容所で命を落とし、たった1人残されての生還だったという。

このような経験は、残念ながらあの時代と地域ではけっして珍しいものではない。
収容所の体験記も、大戦後には数多く発表されている。
その中にあって、なぜ本書が半世紀以上を経て、なお生命を保っているのだろうか。
今回はじめて手にした読者は、深い詠嘆とともにその理由を感得するはずである。

著者は学者らしい観察眼で、極限におかれた人々の心理状態を分析する。
なぜ監督官たちは人間を虫けらのように扱って平気でいられるのか、
被収容者たちはどうやって精神の平衡を保ち、または崩壊させてゆくのか。
こうした問いを突きつめてゆくうち、著者の思索は人間存在そのものにまで及ぶ。
というよりも、
むしろ人間を解き明かすために収容所という舞台を借りているとさえ思えるほど、
その洞察は深遠にして哲学的である。
「生きることからなにを期待するかではなく、
……生きることがわたしたちからなにを期待しているかが問題」
というような忘れがたい一節が、新しくみずみずしい日本語となって、随所に光をおびている。
本書の読後感は一手記のそれではなく、すぐれた文学や哲学書のものであろう。

今回の底本には、旧版に比べてさまざまな変更点や相違が見られるという。
それには1人の哲学者と彼を取り巻く世界の変化が反映されている。
一度、双方を読み比べてみることをすすめたい。
それだけの価値ある書物である。
(大滝浩太郎)

内容紹介
〈わたしたちは、おそらくこれまでのどの時代の人間も知らなかった「人間」を知った。
では、この人間とはなにものか。
人間とは、人間とはなにかをつねに決定する存在だ。
人間とは、ガス室を発明した存在だ。
しかし同時に、ガス室に入っても毅然として祈りのことばを口にする存在でもあるのだ〉

「言語を絶する感動」と評され、人間の偉大と悲惨をあますところなく描いた本書は、
日本をはじめ世界的なロングセラーとして600万を超える読者に読みつがれ、現在にいたっている。
原著の初版は1947年、
日本語版の初版は1956年。
その後著者は、1977年に新たに手を加えた改訂版を出版した。

世代を超えて読みつがれたいとの願いから生まれたこの新版は、
原著1977年版にもとづき、新しく翻訳したものである。

私とは、私たちの住む社会とは、歴史とは、そして人間とは何か。
20世紀を代表する作品を、ここに新たにお送りする。



ありがとうございました。



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