愛と光と忍耐を求めて -7ページ目

愛と光と忍耐を求めて

プルーストの「失われた時を求めて」を真似てるわけではありませんが、悠久の時の流れの中での一瞬の人生。しかし、それを知っている魂には永遠の命があるのかも知れません。テーマは「修業の場としての魂の人生」

無道人之短  無説己之長

 

人の短を言う事なかれ、おのれの長を説くことなかれ

 

 

この『座右の銘』(写真は省略)は、

空海の真筆といわれています。

 

しかし、この書は、

『空海の座右の銘』ではなく、

 

中国の崔瑗(さいえん、字は子玉、78~143)東漢時代の政治家・文人)

の座右の銘『崔子玉座右銘断簡』を墨書したものです。

 

 

崔瑗の『座右銘』は、中国南北朝時代に編纂された詩文集である

『文選』に収録されており、

 

唐代の詩人・白楽天は、

この『座右銘』に感動して『続座右銘序』を作り、

「崔子玉座右銘、余窃慕之。雖未能尽行、常書屋壁。」

(崔子玉の座右銘は、余窃(ひそ)かに之を慕う。

未だ尽(ことごと)くは行うこと能(あた)わずと雖ども、常に屋壁に書す」

と言っています。

 

空海の座右銘は、

 

「人の短所を言うなかれ、自分の長所を説くなかれ。」

 

                   『崔子玉座右銘断簡』

ですが、他にも、

 

「自分の長所を言いなさい、人の短所を言いなさい」

 

                     『弁顕密ニ教論』

 

「人の短所を言いなさい、自分の短所も言いなさい」

 

                        『性霊集』

 

そして、晩年の著作では、

 

「自分の短所を言わず。自分の長所を言いなさい」

 

「他人の短所を言わず。他人の長所を言いなさい」

 

「短所はすなわち長所です。長所はすなわち短所です」

 

「人には長所も短所もない。一切は空(くう)です」

 

「そして、人は、本来、生まれたままに、仏です」

 

                      『秘蔵宝鑰』

 

<参考資料>

 

崔瑗『座右銘』

 

[解読]

無道人之短        

無説己之長

施人慎勿念

受施慎勿忘

世誉不足慕

唯仁為紀綱

隠心而後動

謗議庸何傷

無使名過実

守愚聖所臧

在涅貴不緇

曖曖内含光

柔弱生之徒

老氏誡剛強

行行鄙夫志

悠悠故難量

慎言節飲食

知足勝不祥

行之苟有恒

久久自芬芳

 

[訓読]

人ひとの短たんを道いうこと無なかれ

己おのれの長ちょうを説とくこと無なかれ

人ひとに施ほどこしては慎つつしみて念おもうこと勿なかれ

施ほどこしを受うけては慎つつしみて忘わするること勿なかれ

世よの誉ほまれは慕しとうに足たらず

唯ただ仁じんのみ紀綱きこうと為なせ

心こころに隠はかりて後のち動うごく

謗議ぼうぎ、庸何なんぞ傷いたまん

名なをして実じつに過すぎしむること無なかれ

愚ぐを守まもるは聖せいの臧よみする所ところなり

涅でつに在あるも緇くろまらざるを貴たっとぶ

曖曖あいあいとして内うちに光ひかりを含ふくむ

柔弱じゅうじゃくは生せいの徒となり

老氏ろうしは剛強ごうきょうを誡いましむ

行行こうこうたり鄙夫ひふの志こころざし

悠悠ゆうゆうとして故もとより量はかり難がたし

言げんを慎つつししみ飲食いんしょくを節せっす

足たることを知しりて不祥ふしょうに勝かつ

之これを行おこないて苟まことに恒つね有あらば

久久きゅうきゅうにして自おのずから芬芳ふんぽうあらん

 

[訳]

他人の短所を責めてはいけない。

自分の長所を誇ってはいけない。

他人のために良いことをしても、そのことを恩に着せてはいけない。

自分が他人から良いことをしてもらったときには、いつまでも忘れてはいけない。

世間の名声などは、求める価値がない。

思いやりの心をもっていることが、人間として大事なのだ。

心の中でよく考えてから行動を起こせ。

他人から悪口を言われても、意に介する必要はない。

実力以上の名声を求めてはいけない。

自分は人より優れているなんて思わずに、愚か者の本分に甘んじることを、聖人も良しとしている。

黒い土のような汚い世の中で生活していながらも、自分自身が汚れて黒くならないことが大切だ。

暗愚であっても、自分の中にキラリと光るものを持つ。

やわらかく、しなやかに生きることが、この世を生きるすべだ。

老子も強く勇敢に生きてはいけないと戒めている。

強情で強硬な生き方は、卑しい人のやること。

ゆったりと生きるならば、限りなく可能性は広がってくる。

言葉をつつしみ、暴飲暴食を避ける。

欲望肥大を戒め、災難もしなやかに乗り越える。

以上を一つ一つ常に実行してゆくならば、

長い年月のうちに必ず人徳がそなわってくる。